大型連休明け、突如としてツイッター上で、「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグがトレンド入りしました。トレンド入りとは、このタグが持つ占有率が上位に来たといったもの。占有率ですから、深夜早朝などツイートの総数が少ない時間帯は絶対数が少なくてもトレンド入りできます。
これは余談ですが、私の番組のハッシュタグ「#cozy1242」も放送している朝6時~8時で、たまにトレンド入りしています。
さて、今回の「#検察庁法~」は9日から10日、ずっとトレンド入りしていました。3日間で470万件以上のツイートがあったと言われています。ここまでの投稿があり、ハッシュタグが人目につくようになると、この主張が世論の代表であるかのように扱われ始めました。
改正案そのものについては、夕刊フジ紙上で碩学の方々の論考が多数紹介されていますから、ここでは触れません。
一方で、短期間でこれだけのツイートがあったのは機械的につぶやいたり、リツイートしたせいで、世論の反映ではないという指摘もあります。
東大大学院の鳥海不二夫准教授(計算社会科学)は「#検察庁法~」の動きを分析し、ブログなどで公開しています。
詳しくは全文をお読みいただきたいのですが、ツイートしたアカウントにスパムはあまり見られなかったそうです。ただ、少数のアカウントによって大量に拡散したとしいています。ボタン1つのリツイートによる拡散が450万ありましたが、その半数は全体の2%のアカウントが行っていたそうです。
となると、単純に「これが世論の反映だ」と断言するのは難しく思えます。では、普段「ネットは極論が横行しやすい」としてきた新聞などは、どう報じたでしょうか。
朝日新聞は11日の東京最終版社会面で大きく報じ、さらに翌12日には1面トップの見出しに「検察庁法改正案、抗議ツイート急拡大」と載せました。
属性分布をならし、統計学的に有意な世論調査の結果ならまだしも、有名人が多数ツイートしたとはいえ、どの程度の人数がつぶやいたのかも、属性も定かではないものを1面トップの見出しにまでして、これこそ世論であるかのように扱うのは、冷静さを欠いているのではないかと思います。それでも、自社の主張に沿っていればそれでいいのでしょうか?
SNSを用いての情報の偏りやフェイクニュースの弊害は、国内外の事例とともに、さまざまに報じられています。もちろん、ネットは玉石混交ですから、報道されないような正確な情報や貴重な情報が当事者から発信されるなど、素晴らしい側面も多くあります。
ですが、今回は既存メディアがSNS上の動きに乗っかって世論を動かそうとしたところに危うさを感じました。
■飯田浩司(いいだ・こうじ) 1981年、神奈川県生まれ。2004年、横浜国立大学卒業後、ニッポン放送にアナウンサーとして入社。ニュース番組のパーソナリティーとして、政治・経済から国際問題まで取材する。現在、「飯田浩司のOK!COZY UP!」(月~金曜朝6-8時)を担当。趣味は野球観戦(阪神ファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書など。