トランスジェンダー「治療止まった」 感染時の性別発表に不安の声 新型コロナ

新型コロナウイルスの感染拡大で、出生時の戸籍の性別とは異なる性別を自認するトランスジェンダーの人たちが、必要な診療を受けられないなど深刻な影響を受けていることが支援団体のアンケートで判明した。当事者たちから寄せられた切実な訴えとは。【藤沢美由紀/統合デジタル取材センター】
クリニック閉鎖、経済的影響
アンケートは、トランスジェンダーの支援に取り組む市民団体「Team Respect and Solidarity」(略称・TRanS)が実施した。5月1~20日、トランスジェンダーの人たちを対象に医療へのアクセスについて尋ね、18~67歳の496人から回答を得た。そのうち新型コロナウイルスの影響について119人が自由記述で回答した分を、24日に公表した。
「受診・治療がストップした」を挙げた人が21人で最多だった。具体的には「外出自粛で職場付近のクリニックに通えなくなり、ここ数カ月ホルモン注射を打てていない」「注射のため通っていたクリニックが一時閉鎖になった」などの声が寄せられた。「休業中で生活費を得ることが難しく、ホルモン療法を中止せざるを得なくなった」と経済的な影響を訴える声もあった。
トランスジェンダーのうち性同一性障害と診断を受けた人の多くが、男性ホルモン製剤や女性ホルモン製剤の注射、経口薬などのホルモン療法を受けている。頻度は人によって異なるが、注射は約1~3週間に1回、経口薬は毎日服用する必要があるという。急な中断は、体調不良やホルモンバランスの変化による不調につながる。
戸籍変更できず「転職に支障」
このほか、16人が国際便の減少などによる「個人輸入のホルモン製剤が届かない」と訴え、13人が「通院に伴う感染への不安」を挙げた。性器の摘出や形成といった性別適合手術を受けた後、戸籍上の性別変更手続きが滞っている例もあり、「タイで子宮と卵巣の摘出手術を行い、戸籍変更のため裁判所での面談の日も決まっていたが、直前に緊急事態宣言が出たことで戸籍変更ができない。転職活動にも支障が出ている」という声も寄せられた。
また、自身が新型コロナウイルスに感染した際の、性別に関する扱いについて不安を訴える意見も4件あった。「自治体からの発表で、性別について意に反した扱いをされることは耐えがたい苦痛になる」「身体の性で扱われるのではないかと不安がある」といった意見があった。
TRanSの代表で看護師でもある浅沼智也さん(31)は「特に地方などでトランスジェンダーが診療を受けられるクリニックが少ない現状や、本人の意に反して性別に関する情報が暴かれやすい問題が、より浮き彫りになった。当事者の健康とプライバシー、人権が守られる社会が必要だ」と話した。