「理不尽な事件の真相が少しでも明らかになってくれたら」。京都アニメーション放火殺人事件で青葉真司容疑者(42)が逮捕されたことを受け、犠牲になった静岡県出身のアニメーター、大村勇貴さん=当時(23)=が学生時代に絵本を寄贈した同県松崎町の職員、深沢準弥さん(52)はこう話した。
大村さんは同県菊川市出身。昨年3月に常葉大(静岡市)の造形学部を卒業し、同4月から憧れの京アニで働き始めたばかりで事件の犠牲となった。
大学時代、赤と白の帽子をかぶった2人のリレー選手と懸命に声援を送る大勢の子供たちを描いたイラストレーション作品で、二科展デザイン部門の奨励賞を受賞したこともある大村さん。同じく大学在籍時に制作した、同町の観光地をキャラクターに模して紹介した絵本「うーちゃんのまつざき」を同町に寄贈。深沢さんは大村さんら同大の学生が平成29年に町を訪れた際、案内役を務めた。
深沢さんの大村さんに対する最初の印象は「静かに説明を聞く、おとなしい子だった」。だが、完成した絵本を見て「実は描きたいものを強く持っていると感心した」といい、作品について「大村君の目には、町がこんなにすてきな場所に見えているのかと思うと誇らしい気持ちになった」と喜んだ。
絵本の完成記念として朗読会も開催され、同席した大村さんは朗読した担当者に「キャラクターの気持ちになって読んでくれてありがとう」と感謝の気持ちを告げたという。
心優しい、将来ある若者だったが、事件で犠牲になった。このことを知った深沢さんは、町立図書館に保管されていた大村さんの絵本の展示や、町内のイベントでの読み聞かせの会などを企画した。
以前、「生きていれば京アニで活躍してくれたと思う。アニメ界の損失だ。本当に悔しい」と話していた深沢さん。青葉容疑者について尋ねると、「許せない。逮捕されてもその気持ちは変わらない」と改めて怒りをあらわにした。