虐待対応の激増で児童相談所は「機能不全」寸前、現場のケースワーカーが語る苦悩

神戸市で今年2月、家を追い出された小学6年生の女児が、児童相談所(子ども家庭センター)を訪れた際に、対応した職員に追い返されていたことが判明して、大きな問題となった。また、2019年1月には、千葉県野田市で10歳女児が虐待を受けて死亡。管轄する柏児童相談所は女児を一時保護していたものの、親族のサポートが見込めるとの理由で保護を解除していた。 虐待対応の激増で児童相談所は機能不全だと指摘されることもあるが、実態はどうなっているのか。児童相談所のケースワーカー(児童福祉司)からは「人数を増やさないと解決しない」「事件になるようなものまで、福祉でカバーすべきなのか」など、苦悩する声があがっている。(ライター・喜連川智敬) ●親権者の同意がなくても、強制的に保護できるようになったが… 児童相談所は児童専門の公設専門機関で、都道府県・政令指定都市・一部中核市が管轄して設置されている。職員の多くが福祉職だ。業務は、親・学校などから児童(児童福祉法上は18歳以下、事情により22歳までを含むことがある)に関する相談に応じることなど、広く児童福祉全般にわたっている。 虐待対応も業務のひとつで、担当するのは主にケースワーカーと呼ばれる児童福祉司である。近年、悪化するこの問題に彼らが迅速かつ的確に対応できるように法律が改正され、虐待が疑われて必要性があると判断されるときには、親権者の同意がなくても児童を強制的に保護できるようになった。 しかし、虐待通報を受けて現場に赴き、虐待を疑ってもすぐに保護するのは難しいことが多いという。虐待対応を担当するケースワーカーが、現場の苦悩を話してくれた。 「虐待の相談対応件数は爆発的に増えており、ケースワーカーの人数を増やして、質を向上しなければ何も解決しません」 厚生労働省によると、児童虐待相談対応件数が2018年度は約16万件あり、2012年度以降は毎年10%以上の伸びを示しているという。児童相談所にもよるが、ケースワーカー1人当たりの担当件数は50件程度あるとされているのだ。 ●通報があれば、対象エリアをしらみつぶしに調査 児童相談所では通報を受けると、職員が受理して24時間以内に子供の安全確認をすることになっている。「どこの、誰」であるかがわかっていればまだしも、そうでなければ対象エリアをしらみつぶしに調査して、該当児童を探さなければならない。 該当児童が特定できれば、学校・医療機関など関係機関を調査して虐待の有無を判断する。これらの情報を集めた後に会議を開き、対応方針・方法を検討するのだ。1案件に少なくともこれだけの労力が必要で、その後に経過観察・一時保護などの対応が加われば、1人の担当者が一度に複数案件を抱えるのは無理がある。 ●母親のパートナーがドアにチェーンをかけ、暴言吐き続けるケースも
神戸市で今年2月、家を追い出された小学6年生の女児が、児童相談所(子ども家庭センター)を訪れた際に、対応した職員に追い返されていたことが判明して、大きな問題となった。また、2019年1月には、千葉県野田市で10歳女児が虐待を受けて死亡。管轄する柏児童相談所は女児を一時保護していたものの、親族のサポートが見込めるとの理由で保護を解除していた。
虐待対応の激増で児童相談所は機能不全だと指摘されることもあるが、実態はどうなっているのか。児童相談所のケースワーカー(児童福祉司)からは「人数を増やさないと解決しない」「事件になるようなものまで、福祉でカバーすべきなのか」など、苦悩する声があがっている。(ライター・喜連川智敬)
児童相談所は児童専門の公設専門機関で、都道府県・政令指定都市・一部中核市が管轄して設置されている。職員の多くが福祉職だ。業務は、親・学校などから児童(児童福祉法上は18歳以下、事情により22歳までを含むことがある)に関する相談に応じることなど、広く児童福祉全般にわたっている。
虐待対応も業務のひとつで、担当するのは主にケースワーカーと呼ばれる児童福祉司である。近年、悪化するこの問題に彼らが迅速かつ的確に対応できるように法律が改正され、虐待が疑われて必要性があると判断されるときには、親権者の同意がなくても児童を強制的に保護できるようになった。
しかし、虐待通報を受けて現場に赴き、虐待を疑ってもすぐに保護するのは難しいことが多いという。虐待対応を担当するケースワーカーが、現場の苦悩を話してくれた。
「虐待の相談対応件数は爆発的に増えており、ケースワーカーの人数を増やして、質を向上しなければ何も解決しません」
厚生労働省によると、児童虐待相談対応件数が2018年度は約16万件あり、2012年度以降は毎年10%以上の伸びを示しているという。児童相談所にもよるが、ケースワーカー1人当たりの担当件数は50件程度あるとされているのだ。
児童相談所では通報を受けると、職員が受理して24時間以内に子供の安全確認をすることになっている。「どこの、誰」であるかがわかっていればまだしも、そうでなければ対象エリアをしらみつぶしに調査して、該当児童を探さなければならない。
該当児童が特定できれば、学校・医療機関など関係機関を調査して虐待の有無を判断する。これらの情報を集めた後に会議を開き、対応方針・方法を検討するのだ。1案件に少なくともこれだけの労力が必要で、その後に経過観察・一時保護などの対応が加われば、1人の担当者が一度に複数案件を抱えるのは無理がある。