玉川徹氏と百田尚樹氏の研究、2人から見つかる意外な共通点

玉川徹氏(57)と百田尚樹氏(64)──かたや“政権批判の急先鋒”のコメンテーター、かたや“総理に最も近い作家”である。正反対な主張を繰り広げる2人だが、その「発言のスタイル」を紐解くと、意外な“共通点”が見えてくる。6月17日に『ルポ 百田尚樹現象 愛国ポピュリズムの現在地』を上梓するノンフィクションライター・石戸諭氏がレポートする。(文中敬称略) ◆自分の気持ちに正直な2人 緊急事態宣言が全都道府県で解除されてから一夜明けた、5月26日──。『羽鳥慎一モーニングショー』で玉川徹は上機嫌だった。現在、日本で最も注目されているテレビ朝日社員コメンテーターである。 玉川は最初期から一貫して新型コロナの怖さを大きく強調し、PCR検査を希望者に実施せよ、経済的な補償をせよと訴え、新型コロナ禍で『モーニングショー』を磐石の高視聴率番組にした。 「やっぱり頑張りましたよ、みんな。法律で罰則がないにもかかわらず、抑えられたという事もうれしい」「我々は戦士だ。でも、戦士にも休息が必要なんですよ」 その声は無邪気なまでに明るい。ほんの1か月前に“誤報騒動”を巻き起こした本人とは思えないほどに快活だった。4月28日放送回で、前日の東京都の感染者数(39人)について、「番組のスタッフが確認しているんですけど、39という件数は全部これ民間の検査の件数なんです」と発言したが、実際は行政機関による検査も含まれ、訂正・謝罪に追い込まれた一件である。 「誤報」すらも話題に変えていく姿勢、そして過去を引きずらずに今という瞬間を大事にする姿勢は本当に似ている、と思った。 誰に? 首相・安倍晋三に最も近いベストセラー作家・百田尚樹に、である。 百田も新型コロナ禍で、注目を集めた人物の一人と言っていいだろう。私は『ルポ 百田尚樹現象 愛国ポピュリズムの現在地』の取材で、百田を5時間半以上インタビューした。 2人に共通すると感じるのが、「その時々の“思い”を重視した発言」だ。玉川は緊急事態宣言について、国が躊躇していた当初は「早く出すべき」と主張し、宣言されたらされたで「まだ甘い」と、その時々で感じたままに発言する。 百田も新型コロナ対策をめぐり、安倍政権への評価を二転三転させている。当初中国、韓国からの入国禁止策を取らなかった安倍政権を容赦無く批判したが、首相側が会食をセッティングし、2月28日に実現すると、百田は以降、しばらくの間、批判のトーンを弱めた。表面的には一貫性のない言動に、リベラル派論客の中には、会食の効果があって批判を引っ込めたと見る向きもあった。だが、そうした見方は間違っている。
玉川徹氏(57)と百田尚樹氏(64)──かたや“政権批判の急先鋒”のコメンテーター、かたや“総理に最も近い作家”である。正反対な主張を繰り広げる2人だが、その「発言のスタイル」を紐解くと、意外な“共通点”が見えてくる。6月17日に『ルポ 百田尚樹現象 愛国ポピュリズムの現在地』を上梓するノンフィクションライター・石戸諭氏がレポートする。(文中敬称略)
◆自分の気持ちに正直な2人
緊急事態宣言が全都道府県で解除されてから一夜明けた、5月26日──。『羽鳥慎一モーニングショー』で玉川徹は上機嫌だった。現在、日本で最も注目されているテレビ朝日社員コメンテーターである。
玉川は最初期から一貫して新型コロナの怖さを大きく強調し、PCR検査を希望者に実施せよ、経済的な補償をせよと訴え、新型コロナ禍で『モーニングショー』を磐石の高視聴率番組にした。
「やっぱり頑張りましたよ、みんな。法律で罰則がないにもかかわらず、抑えられたという事もうれしい」「我々は戦士だ。でも、戦士にも休息が必要なんですよ」
その声は無邪気なまでに明るい。ほんの1か月前に“誤報騒動”を巻き起こした本人とは思えないほどに快活だった。4月28日放送回で、前日の東京都の感染者数(39人)について、「番組のスタッフが確認しているんですけど、39という件数は全部これ民間の検査の件数なんです」と発言したが、実際は行政機関による検査も含まれ、訂正・謝罪に追い込まれた一件である。
「誤報」すらも話題に変えていく姿勢、そして過去を引きずらずに今という瞬間を大事にする姿勢は本当に似ている、と思った。
誰に? 首相・安倍晋三に最も近いベストセラー作家・百田尚樹に、である。

百田も新型コロナ禍で、注目を集めた人物の一人と言っていいだろう。私は『ルポ 百田尚樹現象 愛国ポピュリズムの現在地』の取材で、百田を5時間半以上インタビューした。
2人に共通すると感じるのが、「その時々の“思い”を重視した発言」だ。玉川は緊急事態宣言について、国が躊躇していた当初は「早く出すべき」と主張し、宣言されたらされたで「まだ甘い」と、その時々で感じたままに発言する。
百田も新型コロナ対策をめぐり、安倍政権への評価を二転三転させている。当初中国、韓国からの入国禁止策を取らなかった安倍政権を容赦無く批判したが、首相側が会食をセッティングし、2月28日に実現すると、百田は以降、しばらくの間、批判のトーンを弱めた。表面的には一貫性のない言動に、リベラル派論客の中には、会食の効果があって批判を引っ込めたと見る向きもあった。だが、そうした見方は間違っている。