新型コロナウイルス対策で、政府が「国民一律10万円」とした特別定額給付金をめぐり、看過できない事態が進行している。兵庫県加西(かさい)市が、市職員全員からの寄付を前提にコロナ対策の予算を編成し、市議会も了承していたのだ。西村和平(かずひら)市長は「寄付は任意で強制ではない」と説明しているが、おかしくないか。
5月11日の加西市臨時市議会で、ひとり親家庭支援や中小企業救済の基金設置が決まった。積立金は7750万円。うち西村市長と市議らの報酬減額と、西村市長ら特別職3人の夏のボーナス返上によって計2165万円を捻出した。残りの約5585万円は、約600人の市職員から10万円ずつの寄付で賄うという。
西村市長は記者会見で「市の財政調整基金は潤沢ではない。市職員は今のところ基本的な賃金で打撃を受けておらず、国からの給付金を寄付してもらおうと考えた」といい、寄付は「任意」だと強調した。
ただ、市職員の約半数は市立病院勤めで、病院内からは「新型コロナで苦しい時になぜ…」と困惑の声が上がった。
別の市職員は「納得しないまま『踏み絵』を迫られて、体のいいカツアゲみたいな気がする。市の職員組合は、かつて西村市長がトップを務めていただけに、『おかしい』と強く出られないのではないか」と、夕刊フジの取材に語った。
市関係者によると、市職員から少なくとも計約1200万円がこれまでに集まったが、目標金額に遠く及ばず、アルバイトにまで寄付を呼びかける事態になったという。
特別定額給付金をめぐっては、広島県の湯崎英彦知事が職員などに寄付を求める意向を示したが、批判を受けて撤回している。
兵庫県在住のジャーナリスト、小笠原理恵氏は「市側が職場内で寄付しないのを許さない空気を作り出しているとすれば、パワハラと同じだ。税収不足の自治体が同様の手法を取り、いずれ一般市民にも強制的に徴収するのが当たり前になるのではと危惧する。実に恐ろしい」と語っている。