2017年10月に茨城県日立市の県営アパートで妻子6人を殺害して火を付けたとして、殺人罪などに問われた無職、小松博文被告(35)の裁判のうち、詐欺罪などを対象とした区分審理の初公判が2日、水戸地裁であった。
起訴内容について問われた小松被告は「覚えていないので、なんとお答えしていいか正直分からない」と述べた。結城剛行裁判長は、被告が記憶喪失であることを認めたが、弁護側の公判停止の申し立ては退けた。
弁護側は、被告は勾留中の18年11月に心肺停止となり、事件当時の記憶を喪失したと主張。当時の行動を認識しておらず、検察側の主張に適切に反論できない恐れがあるとして、刑事訴訟法に基づく公判停止を申し立てた。
結城裁判長は被告について、意思疎通ができない状態ではなく、弁護士の援助があれば公判を続けられると判断。心神喪失ではないとして、公判停止の申し立てを退けた。
起訴状によると、小松被告は16年11月と17年5月、日立市内の金融機関で氏名を削った運転免許証を示して口座を開設し、販売店で携帯電話をだまし取ったなどとされる。
検察側は冒頭陳述で「偽造の免許証を利用して携帯電話機をだましとろうと考えた」と指摘。公判停止の申し立てが退けられたため、弁護側は、当時の行動の認識や記憶がないとして、起訴内容について全面的に争う姿勢を示した。
区分審理は、裁判の長期化を避けるため、裁判員裁判の対象外の内容を裁判官だけで審理し、有罪か無罪かの部分判決を出す。殺人罪などは今後、裁判員裁判で審理し、判決が言い渡される。【川島一輝】