新型コロナウイルスの影響で資金繰りが困難になった中小企業や小規模事業者を支援しようと、奈良県が全国初として打ち出した独自の融資政策が事実上「破綻」し、見直しを迫られることになった。無利子・無保証料が売りだったものの、申し込みの殺到で想定以上に費用がかさんだため、県は5日、6月17日の申し込み分から県による全額負担を取りやめることを明らかにした。県は財源不足から3回にわたって補正予算の編成を繰り返したが、将来への財政負担も膨らみ、企業側にも一部負担を求める。
県は3月末、県の三つの制度融資について、金利と信用保証協会に支払う信用保証料の両方を全額負担すると発表。融資枠(金融機関が融資)を30億円に設定し、2月7日以降の申し込み分から適用した。だが、発表直後から融資の申し込みが増え、4月上旬には想定枠の2倍近くの57億円の融資が決まった。
政府の緊急事態宣言が全都道府県に拡大されると申し込みは急増し、1000件を突破。4月24日には融資決定額が368億円に上った。県は融資枠を400億円に増額し、当初予算に計上していた3億円の金融対策費では足りず、同28日の臨時議会に提出した補正予算案に、利子と保証料に充てるため10億円を新たに盛り込んだ。
だが、その後も申し込みは増え続け、5月21日には4055件、融資総額は973億円に。同27日には、知事の専決処分で再び11億円の補正予算を編成。5月から国の支援で全都道府県で始まった制度融資(保証料と当初3年間の利子は国が負担)と合わせ、リーマン・ショック(2008年)時の947億円を超える1500億円まで枠を広げた。
県は国の支援制度の利用を呼びかけるものの、限度額など条件が良い県の制度融資への申し込みが止まらず、5月29日には決定額が1200億円超に。県は6月議会に提出する補正予算案にさらに37億円を計上した。一方で、21年度以降の利子負担分が260億円を超える見通しとなるなど財政圧迫は避けられず、6月17日の申し込み分から全額負担をやめることを決めた。
県の幹部は「財政負担が大きくなっていることが(制度変更の)理由の一つであることは事実」と見通しの甘さを認めている。【久保聡】