「なぜ政府は留学生だけ差別するのか」 大学教員たちが立ち上がった理由

「学生に救済の手を差し伸べるのに国籍で区別することは考えられません」。新型コロナウイルスの影響で困窮する学生に対する政府の支援策で、留学生にのみ「学業成績が優秀」という日本の学生にはない条件が課されたことに対し、大学教員たちが署名を集めて反対している。留学生差別に対し、立ち上がった有志教員たちの思いを聞いた。【藤沢美由紀/統合デジタル取材センター】
「母国と日本との貴重な架け橋になってきた」
政府は新型コロナの感染拡大により、アルバイト収入の減少などで困窮する学生への支援策として、1人につき10万~20万円の「学生支援緊急給付金」の支給を打ち出した。全国の大学、大学院、短大、専門学校などに通う学生のうち、自立してアルバイト収入で学費を賄っていることや、収入が大幅に減少していることなどが給付の要件だ。留学生はその上に、「学業成績が優秀」「出席率8割以上」など、日本の学生にはない条件が設けられた。文部科学省はこれについて、「いずれ母国に帰る留学生が多い中、日本に将来貢献するような有為な人材に限る要件を定めた」と説明した。
こうした要件や文科省の姿勢に疑問を持った神戸大の濱田麻矢教授(中国現代文学)や京都大の落合恵美子教授(家族社会学)らが「留学生の差別的取り扱いに反対し、すべての困窮学生に届く支援を要望する大学教員声明」をまとめた。呼びかけ人には京都大の山極寿一総長らも加わり、40人近くが名を連ねている。
声明は、給付金が「困窮状態の学生の生命の救済に関わるものであるはず」とした上で、「どうして、この困難な時期に、留学生だけが成績によって分断され、日本人学生と異なる差別的な取り扱いを受けなければならないのでしょうか」と疑問を投げかける。
また、「私たち教員にとって、自分が向き合っている学生はみな『日本の大学で学んでいる学生』であり、救済を差し伸べるのに国籍で区別することは考えられません」と指摘。これまで日本で学んで卒業した留学生たちが「母国と日本との貴重な架け橋になってきたことは紛れもない事実」と訴え、留学生への成績要件の撤廃などを求めている。濱田教授らは声明文をインターネット上で5月26日に公開し、大学教員を主な対象に、賛同する署名を集めている。
ツイッターに「なぜ外国人を助けるのか?」と反発の声
文科省が追加で発表した「Q&A」では、支援対象者について、学生から申請を受け「最終的には大学等が総合的に判断する」としている。しかし日本人学生にない成績などの要件自体は残されている。呼びかけ人の一人の兵庫県立大の園田節子教授(華僑華人史)は「国が条件を設けることで、救うのは限られた人だけというメッセージを送っていることが問題です」と指摘する。濱田教授も「留学生は日本の役に立つために来てもらっているわけではありません。役に立ちそうかどうかで判断すべきではない」と訴える。
濱田教授によると、声明を公表した後、「なぜ外国人を助けなければいけないのか」といった反発の声もツイッターなどで寄せられたという。濱田教授は「困っている人を助けると自分が損する、という感覚があるようで驚きました。今ここで困っている学生を国籍で区別するような国でいいのでしょうか」と話す。
落合教授は「『情けは人のためならず』で、実際に、日本を理解し、母国へ帰った留学生たちが強い味方になって日本を助けてくれています。グローバル化が進む中、国際関係は日本にとって大切です」と話す。
7日時点で集まった大学教員らの署名数は約1300。教授らは「学生と接する教員として、大学人として、国籍で学生を分けることに加担すべきではない。おかしなことには声を上げなければ学生との信頼関係にも関わる。教員たちの意思表明としても意義がある」と話す。
署名は10日午前0時まで受け付け、その後文科省に提出する予定という。ホームページ上の「声明」(https://note.com/ryugakusei_shien/n/n9136042db1eb)が掲載されたページから賛同の署名ができる。