「富士山が見える棚田」で知られる山梨県富士川町の「平林の棚田」を守り続けてきたオーナー制度に、新型コロナウイルスの流行が影を落としている。県境をまたぐ移動自粛が要請される中、オーナーが棚田を訪れることができないからだ。農家の高齢化に伴い県内外の住民の手を借りながら農作業をしてきたが、事態が長引けば棚田を維持できない可能性もあり、主催者は頭を抱えている。【山本悟】
オーナー制度は、棚田がある平林集落の農家が運営する平林活性化組合(中込広男組合長)が、2004年に導入した。高齢化による離農や後継者不足などで耕作放棄地が年々増え、放置すればシカやイノシシのねぐらになり他の田畑を荒らす恐れがある。また、棚田は面積が狭く大型機械が使えないため、高齢の農家には限界があり、効率に劣る作業環境がさらに離農者を生む要因になっている。
そこで、集落の田んぼの3割にあたる耕作放棄地など約1ヘクタールの農作業を所有者から組合が受託し、作業をオーナーを募って実施してきた。年間2万5500円(100平方メートルあたり)を払うとオーナーになれ、5月下旬の田植えに始まり、6月と8月の草刈り、10月の稲刈りと天日干しの農業体験を楽しむ。田植えは、小型機械か手植えかを選べる。収穫した米の全量を受け取れる仕組みだ。
今年度は、家族連れや母親サークル、企業など18団体が応募。うち9団体は東京、神奈川、埼玉など県外の団体で、参加人数は全体の6割以上を占める。
ところが、5月23、24日に予定した田植えを、コロナウイルスが一変させた。政府の緊急事態宣言が山梨県などで解除されたため、県内のオーナーに限り予定通り実施したが、東京、神奈川などから他県への移動は自粛が要請され県外団体は参加できなかった。
県外オーナーの田んぼは、組合役員が代わりに田植えをするが、今後の作業については見通しが立っていない。シカやサルなどの獣害に加え、コロナウイルスとの二重苦にあえぐ組合の中込組合長(72)は「コロナは組合としては打つ手がない。(感染拡大が)長引けば、オーナー離れが進み制度がもたなくなる」と話す。