ビタミンD、乳酸菌、マヌカハニー、納豆、緑茶、タンポポ茶…。いずれも「新型コロナウイルスを予防できる」とうたわれ、話題になった食材や食品だ。便乗して予防効果を宣伝する健康食品も次々と登場し、警察当局が薬局を摘発したり、国が「根拠のあるものはない」と注意喚起したりする事態となった。こうした“騒動”の背景について、専門家が指摘するのは健康食品への理解不足だ。(西山瑞穂)
「新型コロナウイルスにも有効性が期待できます」。大阪府警は4月、このように宣伝してタンポポ茶を販売したとして、医薬品医療機器法違反容疑で薬局とペットショップの経営者らを書類送検した。同法では、患者への治験を踏まえて厚生労働省が承認した医薬品でなければ、病気への効能・効果をうたうことはできないからだ。
違法宣伝容疑で摘発に踏み切ったとはいえ、府警はタンポポ茶の効果自体を評価したわけではない。このペットショップの男性経営者(81)は産経新聞の取材に違法宣伝を謝罪した上で、「タンポポ茶がウイルスに効くことは有名な研究者も認めている。長年信じて飲んでいるおかげで、ほとんど体調を崩したことはない」と強調した。
生活習慣改善が目的
食材としてのタンポポにはあまりなじみがないものの、体によいとされる食品は昔から“生活の知恵”として食習慣に取り入れられてきた。そうした「食の力」は否定されるものではないが、対象が特定の病気となると話は別だ。
昭和女子大の梅垣敬三教授(食品安全学)は「食品には体への強い作用はなく、特定の病気の予防や治療には使えない。しかし、医薬品と同じもののように誤解している消費者は多い」と危機感を抱く。
では健康食品とはどのようなものなのか。健康を目的に販売される食品という以外に明確な定義はないが、医薬品成分以外の、体にプラスとされる栄養素などを含んだものが一般的。あくまでも薬ではなく、「食品」だ。品質はピンからキリまであることから、国は消費者が選ぶ目安として、特定保健用食品(トクホ)▽栄養機能食品▽機能性表示食品-の3つを制度化している。
このうちトクホだけは個別審査を経て消費者庁に機能表示を許可されており、最も信頼できるといえる。それでも認められるのは「おなかの調子を整える」「体脂肪が気になる方に」といった程度の表示。梅垣教授は「健康食品は生活習慣改善のために補助的に使うものだ」とする。
利用状況をメモ
体によいものなら摂取して損はないし、気持ちだけでも楽になるなら十分-。重い持病がある人の中にはそう考えて健康食品に救いを求める人も多いとされ、まだ治療薬がない新型コロナでも、健康食品は不安な心理の受け皿になったといえる。ただ、利用には注意が必要だ。
厚労省のハンドブックによると、過剰摂取した場合、例えばビタミンEは出血性脳卒中、野菜などに含まれるβ-カロテンは喫煙者の肺がんの発症リスクを高めるとされる。
海外製品には医薬品成分が配合される場合もあり、副作用の危険性は低くない。医薬品とも相互に作用し、「病気の人が健康食品を摂取すれば、何が起こるか分からない」(梅垣教授)という。
そこで梅垣教授が薦めるのが利用状況を記録するという手法だ。摂取した製品や日付、分量、その後の体調をメモしておけば、体調が悪化した場合に「お薬手帳」と照らし合わせて原因を想定できる。「体調がよい」とメモが続くなら利用を継続すればいいし、効果を実感できなければやめればいい。「影響を見えるようにしておけば大きな問題にはならない」という。
病気の患者でなければ利用は原則自己責任。だからこそ、国立研究開発法人「医薬基盤・健康・栄養研究所」の健康食品情報などを参考に、消費者自身が信頼性を見極めることが不可欠といい、梅垣教授はこう訴える。
「業者がアピールする研究結果や利用者の体験談は話半分に聞いてほしい。結局はバランスのよい食事と適度な運動が病気の予防に最も有効。新型コロナでもそれは同じだ」