適菜収は、なぜ安倍総理とその支持者を「国賊」と批判するのか? 『国賊論』刊行の理由を聞く

◆安倍総理を「国賊」と呼ぶ理由

―― 適菜さんは新著『国賊論 安倍晋三と仲間たち』(ベストセラーズ)で、安倍総理とその支持者たちを「国賊」と批判しています。「国賊」とは非常に過激な言葉ですが、このタイトルをつけた狙いはどこにあるのですか。

適菜収(以下、適菜):安倍政権支持者たちのやり口を逆手にとったのです。連中は安倍を批判する人たちに「国賊」「売国奴」「反日」などと罵声を浴びせます。戦時中も戦争に反対する人たちは「国賊」や「非国民」といったレッテルを貼られ、罵倒されました。「国賊」というレッテルを貼ることは、議論を封じるための常套手段です。

しかし、戦争に反対することが国家に仇するとは限らない。それどころか、無謀な戦争は国を壊します。言葉は厳密に定義し、かつ正確に使わなければならない。「精選版日本国語大辞典」には、国賊とは「国を乱し、世に害を与える者。国家に仇する者。国敵」とあります。安倍は総理になってから今日に至るまで、国を乱し、世に害を与えてきました。TPPや水道民営化などによって日本の国益を損ね、北方領土交渉では主権を棚上げしてしまった。定義通りの国賊です。

安倍は最初から一貫して売国政策を続けてきました。実際、第一次安倍内閣が誕生したとき、安倍は小泉純一郎の構造改革をしっかり引き継ぎ、加速させると言っています。安保法制騒動では憲法破壊に手を染め、国のかたちを変えてしまう移民政策を嘘とデマで押し通し、森友事件における財務省の公文書改竄、南スーダンPKOにおける防衛省の日報隠蔽、裁量労働制における厚生労働省のデータ捏造など、一連の「安倍事件」で国の信頼性を完全に破壊した。また、放送局の外資規制の撤廃をもくろみ、皇室に嫌がらせを続けてきました。

―― 安倍政権の新型コロナウイルスへの対応があまりにも杜撰だったため、百田尚樹氏など、いままで安倍政権を熱烈に支持してきた人たちも安倍政権を批判するようになっています。彼らも安倍総理が「国賊」であることに気づいたのでしょうか。

適菜:百田は安倍を批判する一方で、「安倍総理はこれまでいいこともたくさんやってきた」とも言っています。要するに、アリバイ作りでしょう。いま安倍政権を批判しておけば、安倍退陣後に「私の忠告を聞いてくれなかったから、こんなことになった」と言い訳できる。この手の卑劣な連中が、社会の空気を見ながら、泥船から逃げ出しはじめました。

◆それでも安倍内閣を支持する人たち

―― 安倍内閣の支持率は下落していますが、依然として安倍政権を支持している人たちも一定数います。

適菜:オウム真理教の信者と同じです。オウム信者たちは目の前の現実を無視し、何が起こっても、「尊師は悪くない」「尊師はむしろ被害者だ」の一点張りでした。そして批判されればされるほど、外部の声を聞かず、狂信的になっていく。

安倍はコロナ対策と称して全世帯に布マスクを配り始めましたが、そこには虫が混入していたり、カビが付着していた。しかも、マスクの製造会社をなかなか明かそうとしなかった。こんな得体の知れないマスクを使えるはずがありません。

先日、ネトウヨがツイッターで私に絡んできました。言っていることはよくわからなかったのですが、「アベノマスク」により日本は助かったということらしい。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の反対ですね。

こういう連中に擁護してもらえる安倍も果報者ですね。うんこにたかるハエみたいなものですが。

◆保守思想を勉強しない保守派たち

―― これまで安倍政権を支えてきたのは、主に保守派とされる人たちです。保守派に分類される人の中で安倍政権を厳しく批判していたのは、適菜さんをはじめ極わずかな人たちだけです。なぜ保守派の大半は安倍政権になびいてしまったのでしょうか。

適菜:保守思想を理解していないからです。保守とは一言で言えば、人間理性に懐疑的であることです。保守は理性のような抽象的なものを警戒し、現実に立脚します。人間は合理的には動かず、社会は矛盾を抱えていて当然だと考えます。

そのため、保守は近代啓蒙思想をそのまま現実社会に組み込むことに否定的です。なぜなら、近代啓蒙思想は理性を拡大すれば理想社会が実現すると考えるからです。保守が急進的な自由主義や平等主義を批判する理由はここにあります。新自由主義を批判するのも当然です。

まあ、安倍政権はそれ以前の話でしょう。ウォール街の証券取引所に行けば「今日は、皆さんに、『日本がもう一度儲かる国になる』(中略)ということをお話しするためにやってきました」「ウォール街の皆様は、常に世界の半歩先を行く。ですから、今がチャンスです」(2013年9月25日)と言い、翌年のダボス会議では徹底的に日本の権益を破壊すると宣言。「そのとき社会はあたかもリセット・ボタンを押したようになって、日本の景色は一変するでしょう」と言い放った*。そもそも「もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました」などと言う「保守」がいるわけがありません。

〈*2014年1月22日世界経済フォーラム年次会議冒頭演説、日本語訳書き起こし|首相官邸〉

結局、安倍政権はカルトと反日勢力の集合体だったのだと思います。政商がそれを利用した。つまり、わが国で「保守派」とされてきた連中は、保守でもなんでもなかったということです。いまごろになって安倍批判を始めた連中も同類。国の破壊が終わった後に批判しても意味がありません。

―― 今回の新型コロナウイルスによって安倍総理のメッキは完全に剥がれました。これを機に保守派が目を覚まし、本来の保守主義に立ち戻ることは考えられませんか。

適菜:残念ながらその可能性は少ない。これまで安倍を支持してきた連中は、安倍内閣が崩壊したあと、今度は小池百合子や維新の会のようなものを担ぎ出すでしょう。すでに一部でそうした動きが見られます。平成の三〇年間にわたる「改革騒ぎ」に対する根本的な反省がない限り、日本に未来はないでしょう。

(4月21日、聞き手・構成 中村友哉)

●適菜収(てきな・おさむ)

1975年山梨県生まれ。作家、作詞家。著書にニーチェの『アンチ・クリスト』を現代語訳した『キリスト教は邪教です!』や『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』(ともに講談社+α新書)、清水忠史との共著『日本共産党政権奪取の条件』(ベストセラーズ)など多数。

【月刊日本】

げっかんにっぽん●Twitter ID=@GekkanNippon。「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。