関電旧経営陣提訴「説明責任ある」「身内意識強い」専門家らの見立ては…

関西電力役員らの金品受領問題などをめぐり、関電が15日、八木誠前会長や岩根茂樹前社長ら元取締役5人に計19億3600万円の損害賠償を求めて提訴することを決めた。問題発覚から9カ月。新たな企業運営に向けた区切りとして、関電が異例の提訴に踏み切る形となった。専門家らはどう見るのか。(鈴木俊輔、石川有紀、江森梓)
「損害額の算定は容易ではない」
15日午後、5人の元取締役を提訴すると発表した関西電力。明らかにした損害額のうち、金品を受領し、工事情報を事前に提供したことによる損害額が「検討中」とされていることについて、担当者は集まった記者に対しこう説明した。
提訴内容の詳細や決定過程については「まだ(提訴の)準備中」「訴訟に影響する」と、回答を避ける場面も目立った。
関電はこの日、臨時の監査役会を開いて提訴方針を決定。「具体的なやり取りは差し控える」としたが、提訴する方針の発表は夕方までずれ込んだ。
「今後の訴訟に影響する可能性がある」などとして、関電の森本孝社長ら現経営陣は発表の場に姿をみせなかった。
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「旧経営陣は違法性や会社への損害を否定して責任を逃れようとしていたが、第三者委員会で責任を認定された以上、関電は提訴する以外はなかった」とするのは、企業のコンプライアンス問題に詳しい郷原信郎弁護士だ。
この訴訟で、一連の問題は区切りを迎えるとした上で、「民事訴訟で動機や事実関係が明らかにされる可能性もあるが、受領した金の流れなど実態解明は行われていないままだ。なぜ問題が起きたのか、会社として説明する責任がある」と関電の対応は企業コンプライアンス上、問題があるとの見方を示した。
経済ジャーナリストの荻原博子さんは、「現経営陣は会見すべきだった。身内意識が強いと思われかねない甘い判断で、今回の提訴決定も、問題発覚から遅すぎるのではないか」と批判する。
第三者委の調査では、役員ら75人が、福井県高浜町の元助役、森山栄治氏(故人)らから約3億6千万円の金品を受領していたほか、工事情報を事前に提供していたことが判明している。
荻原さんは、「電力を扱う公益企業にもかかわらず、甘い汁を吸っていた。原発をめぐる不透明な金が電気料金に上乗せされていると消費者から不信感を抱かれても仕方がなく、関電は消費者への説明責任を果たさなければ、消費者離れが進むだろう」と語った。
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一方、「これまでの関電は身内に対し、非常に甘い企業との印象があったが、今回の提訴で公益企業としての自覚を持ち、生まれ変わろうとしているのが感じられる」と評価するのは、龍谷大の大島堅一教授(環境経済学)。
関電が3月に業務改善計画書をまとめるなど、再発防止に向けた取り組みをしている点については、「実際に癒着のあった原子力事業本部に対する実効的な変革に関しては、はっきりとした動きがみられない。枠組みが変わったとしても、中身が伴わなければ意味がなく、訴訟とともにこれらの動きに注目する必要がある」と述べた。