広島県尾道市を代表する観光スポット、千光寺公園の展望台にある食堂が5月末で閉店し、63年の歴史に幕を下ろした。食事をしながら尾道水道や向島など日本遺産に認定された箱庭的景観を楽しめ、多くの観光客に親しまれてきた。市は老朽化した展望台を建て替える予定だが、食堂は併設しないとしている。【渕脇直樹】
展望台は円筒形をした鉄筋コンクリート2階建てで、千光寺山(標高144メートル)の山頂に1957年6月完成した。屋上に展望台、2階に民間経営の食堂「グリル展望」があり、中央のらせん階段で上り下りする。年間約80万人の観光客が訪れている。
グリル展望にはテーブル席が60あり、窓から景色を一望できた。尾道ラーメンや地元産穴子を使ったどんぶりのほか、パフェやアイスクリームなどを出し、利用客からは「最高の眺め」などの声が上がっていた。
展望台は老朽化が進み、エスカレーターもないため市は建て替えを決定。グリル展望の経営者には2020年2月、立ち退きを求めていた。新たな展望台はバリアフリー化して22年春までに完成させる計画だが、食堂は設けないという。中原一通観光課長は「観光客の回遊性を高めたい。食事は商店街で楽しんでほしい」と話す。
グリル展望の玄関には5月下旬まで「コロナウイルス拡大防止のため5月31日まで休業」の張り紙が掲示され、再開しないまま閉店に。緊急事態宣言解除後、千光寺山ロープウェイも運行再開し戻り始めた観光客には突然の知らせだった。島根県江津市から家族3人で観光に訪れた会社員の男性(39)は「食堂はあれば便利で、新たな展望台にも作ってほしい」と話していた。