産前休暇中に突然解雇の正社員 マタハラ訴訟で初弁論 福岡地裁

産前休暇を取得直後に突然解雇され、無断で健康保険などからも外されていたとして、福岡市中央区の不動産会社に勤めていた女性(26)が、同社に慰謝料など約500万円の支払いを求める訴訟の第1回口頭弁論が22日、福岡地裁(山田智子裁判官)であった。労働審判で同地裁に解決金200万円の支払いを命じられた会社側が異議を申し立てたため、民事訴訟に移行した。女性は「妊娠や出産という中で、体力的にも、精神的にもきつかった」と訴えている。
訴状などによると、女性は2018年1月に正社員として入社し経理を担当。同年8月に妊娠が分かり、経理業務を統括する女性に相談したが「仕事を続けてほしい」と要望され勤務を継続した。女性は出産して約1年後に保育所が決まれば職場復帰する意向で、19年3月9日から会社の承諾を得て産前休暇に入った。
しかし、同月下旬に上司から電話で「解雇するかもしれない」と突如告げられた。女性は出産に備えた里帰りを延期し、電話やメールで上司とやり取りを続けたが連絡は途絶え、その後3月分の給料は未払いになった。正社員だったにもかかわらず、出産後の同年5月に「業務委託契約終了のお知らせ」と題する書面が自宅に届き、最終勤務日の3月8日に契約を解除したと記載されていた。
さらに、産前休暇を取得したその日付で同社が健康保険から女性を外していたことが出産後に発覚。雇用保険は休暇取得前の19年1月に喪失手続きがとられていた。女性は産婦人科に自費で通院。健康保険に入っていれば受給できたはずの「出産手当金」や雇用保険による「育児休業給付金」など計約165万円も受給できなかったという。
女性は19年10月に福岡地裁に労働審判を申し立て、争いは民事裁判に移った。この日の口頭弁論で、会社側は「一方的に勤務しなくなったため、退職手続きをした」などとする答弁書を陳述。これに対し、女性は「産前休暇制度もあり、会社の承諾を受けて休暇を取った」と訴えている。
労働基準法19条は、産前産後休暇中の解雇を禁じている。女性側の井下顕弁護士は「労基法に真っ向から反しており、考えられる労働者の権利を踏みにじっている」と話す。
同社側は毎日新聞の取材に「訴訟中なのでコメントはできない」とした。【宗岡敬介】