◆血税中抜疑惑に説明責任果たさぬ政府
中小企業を救うべき持続化給付金事業が電通に喰い物にされていた。国は持続化給付金の事務事業を「サービスデザイン推進協議会」(以下、「協議会」)に769億円で委託し、協議会は電通に749億円で再委託した。だが「協議会」は電通や竹中平蔵が会長を務めるパソナが設立した法人であり、電通の自作自演で「幽霊企業」「トンネル会社」が血税を中抜きしたという批判が絶えない。
果たしてこの「トンネル会社」はいかなるものなのか? 『月刊日本7月号』では、「糾弾1 電通と結託する安倍政権」として糾弾特集を掲載。今回は本特集より、立憲民主党衆議院議員であり本問題を追及する大串博志氏へのインタビューを紹介しよう。
◆トンネル会社・「サービスデザイン推進協議会」
── 大串さんは、持続化給付金の事務事業をめぐる取引について追及しています。
大串博志氏(以下、大串):持続化給付金は、新型コロナで影響を受け、非常に厳しい状況にある事業者の皆さんに対して支援を行うという、第一次補正予算の中でも最も重要な施策です。この給付金を必要としている方々に確実に届けなければなりません。
ところが、受け付けを開始した5月1日と2日に申請された計約28万7000件のうち、約3・5%の1万件超が未払いになっています。給付金を必要としている方々は、固唾を飲んで支給を持っているのです。
しかし、持続化給付金の事務事業は、実態のわからない「サービスデザイン推進協議会」(以下、「協議会」)に769億円で発注され、「協議会」から749億円で電通に再委託されていました。問題は、この「協議会」に実態が見えないことです。我々は、6月1日に「協議会」の事務所を訪れましたが、部屋の中には誰もおらず、真っ暗でした。電話を鳴らしても、ベルを押しても誰も出てきませんでした。
ところが、「協議会」は6月9日にマスコミに対して事務所で仕事を行なっている様子をわざわざ公開しました。しかし翌10日に我々が訪問してみると、また閉まっていて、事務所には誰もいませんでした。マスコミへの公開は、「アリバイ作り」だったとしか見えません。そもそも、このような実態のない組織に経産省が委託すること自体が大きな問題です。
また、入札にも問題があります。経産省は4月8日に入札を公示しましたが、公示前の3月30日、4月2日と4月3日に経産省は「協議会」と電通を呼んでヒアリングをしていたのです。出来レースだったのではないかという疑いが生じます。
今回の入札には、「協議会」とともにコンサルティング会社のデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーが参加していましたが、入札調書では、「協議会」は「C」ランクであるのに、デロイトは「A」ランクでした。もちろんランクだけでは決められませんが、経産省は「協議会」に発注した理由を説明する責任があります。
── 「協議会」は過去にも経産省から様々な事業を受注しています。
大串:2016年の設立以来、「協議会」は経産省から「おもてなし規格認証」、「サービス等生産性向上IT導入支援事業」など14事業、1500億円以上を受注しています。それらの多くが、持続化給付金事業と同じように、そのまま電通に再委託されています。電通のトンネル会社だという疑いは濃厚です。「協議会」の取引が適切かどうかを、過去にさかのぼってきちんと調査すべきです。
◆「権力に近い人が優遇される流れ」という疑い
── 「協議会」から再委託された電通は、さらに子会社に再々委託しています。
大串:電通ライブ595・7億円、電通テック7・8億円、電通国際情報サービス19・8億円、電通デジタル16・3億円、電通東日本5・5億円です。さらに電通ライブからパソナ、大日本印刷、トランスコスモスに再々々委託されています。これでは、誰がどの事業に対して、どのような責任を負うか不明確になってしまいます。問題が起こっても責任の所在が不明確では是正もできません。私は6月9日の衆議院予算委員会で梶山経産大臣に、このような運営の実態を把握しているかと問い質しましたが、大臣がきちんと状況を把握しているとは思われませんでした。国民の生き死にに関わる給付金業務を監督する立場として、あまりにも無責任です。
── 電通にも多額の委託費が落ちています。
大串:「協議会」から電通に再委託された749億円から、電通の子会社に再々委託された額を引くと、電通に104億円入っていることになります。電通にはこの額が適切なのかどうかを説明する責任があります。
── なぜわざわざ電通がトンネル会社を通して受注したのかが疑問です。
大串:「協議会」は796億円の委託費のうち97%を電通に再委託したことになります。経産省の示している委託契約のひな型には「業務委託の全部を第三者に委託してはならない」と書かれていますが、97%ということはほぼ全部だということです。電通の榑谷典洋副社長は6月8日の会見で「多額の公金を会社のバランスシートに反映させることは経理部門が不適切だと判断した」と述べていますが、そうしたことをやっている会社は他にもあります。株主にきちんと説明すればいいだけの話です。
今回の取引に関しては、不透明な部分が数多くあります。政府がきちんと説明責任を果たさなければ、給付金事業の事業体制が、「権力に近い人が優遇される流れの一環ではないか」という疑惑は払拭されません。 (聞き手・構成 坪内隆彦)
大串博志●立憲民主党衆議院議員。元大蔵官僚
<6月22日発売『月刊日本7月号』より>
【月刊日本】
げっかんにっぽん●Twitter ID=@GekkanNippon。「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。