沖縄は23日、住民を巻き込んだ地上戦となった沖縄戦の犠牲者らを悼む「慰霊の日」を迎えた。最後の激戦地となった沖縄県糸満市摩文仁(まぶに)の平和祈念公園では、県と県議会主催の「沖縄全戦没者追悼式」があった。戦後75年の節目に合わせ、第二次世界大戦で原爆を投下された広島、長崎両市長もメッセージを寄せ、沖縄県の玉城(たまき)デニー知事は平和宣言で「人類史上他(た)に類を見ない惨禍を経験したヒロシマ・ナガサキと平和を願う心を共有し、人類が二度と『黒い雨』や『鉄の暴風』を経験することがないよう、心に『平和の火』をともし、尊い誓いを守り続ける決意を新たにする」と述べた。
追悼式は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、規模を縮小。2004年から毎年参列していた首相や、戦後75年で予定していた広島、長崎両市長、国連代表の招待は見合わせた。約160人が参列し、正午に1分間黙とうした。
玉城知事は平和宣言で、沖縄戦の教訓を次世代に伝えていく決意を示し、「忌まわしい戦争の記憶を風化させない」と誓った。
そのうえで沖縄の過重な米軍基地負担に触れ、「戦後75年を経た現在も米軍専用施設の約70・3%が集中し、県民生活に多大な影響を及ぼしている」と指摘。政府が進める米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への県内移設については「辺野古・大浦湾周辺の海は絶滅危惧種を含む5300種以上の生物が生息している。自然豊かな海を次の世代に残していくために、我々世代が未来を見据え、責任を持って考えることが重要だ」と述べた。
玉城知事は就任後初となった19年の平和宣言では「辺野古移設断念を強く求める」と言及したが、今年は直接的な批判は避けた。
一方、安倍晋三首相は事前収録したビデオメッセージであいさつした。「沖縄の方々には永きにわたり、米軍基地の集中による大きな負担を担っていただいている。基地負担の軽減に向け、一つ一つ確実に結果を出していく決意だ」と強調したが、辺野古移設には今年も触れなかった。
長崎市の田上富久市長はビデオメッセージで「沖縄と広島、長崎の経験は戦争が生み出したものだ。沖縄と被爆地はともに学びながら、戦争の記憶を伝え続け、平和の文化を社会に根付かせていきましょう」と呼びかけた。広島市の松井一実市長は「戦争や核兵器のない状態こそがあるべき姿だということを世界の共通の価値観にしていかなければならない」と強調し、国連の中満泉事務次長(軍縮担当上級代表)もメッセージを寄せた。
玉城知事は追悼式後、報道陣の取材に「表現は少し変えたが、辺野古新基地建設に反対する気持ちは全く変わっていない」と話した。【遠藤孝康】