「イージス・アショア」の配備計画停止、巨額費用1兆円がネックに? 桜林美佐氏が緊急寄稿

河野太郎防衛相が、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画停止を突如発表し、寝耳に水だった自民党国防族議員らから疑問や怒りの声が噴出している。安倍晋三首相は18日の記者会見で、「敵基地攻撃能力保有」も含め、国家安全保障会議(NSC)で安保政策の新しい方向性を徹底的に議論すると表明した。今回の決断をどう見るか。防衛問題研究家の桜林美佐氏が緊急寄稿した。

「イージス・アショア」の計画停止は、やむを得ない選択だったと思う。私自身、導入自体に異論はなかったが、現在の防衛予算規模内では「無理が多過ぎる」と感じていた。
閣議決定された防衛計画や成立した予算を覆すうえ、米国政府や相手企業との関係もあるだけに、計画停止のダメージは絶大だ。それでも、この時期に止めなければ、さらに巨額の国費を投じることが明白だった。河野氏が思い切って決断を下したのではないか。
迷路に入った第一歩は、契約などは防衛装備庁、配備予定地との調整は地方防衛局、米国側はミサイル防衛庁が主体で、いずれも文官が中心であり、運用感覚が不足していたこともあったように見える。
そもそも、装備の導入は運用側から要求するものだが、「イージス・アショア」については政治サイドで決定されたものを、陸上自衛隊が担う構図となっていた。時間をかけて積み上げたものではなかった。
運用当事者となる陸自の中でも、コンセンサス(=合意)が徹底されていなかったとみられる。「何としても配備しよう」というインセンティブ(=動機付け)が、運用する側にも、調整する関係者にも働いていなかった印象は否めない。
最大の理由は、巨額の費用だろう。もちろん一括払いをするわけではないが、「1兆円以上にはなるのではないか」という見立てもある。防衛費の微増では、将来に渡ってとても賄いきれない。
防衛費は年間約5兆円だが、4割が人件費で、その他の必要経費を引くと、大体3兆円だ。「イージス・アショア」導入には、大幅な防衛費増が不可欠だった。
そうしたなかで、迎撃ミサイルのブースター(推進エンジン)が演習場外に落下する可能性が発覚し、これを避けるなら誘導装置を新たに取り付けるなど、さらに莫大(ばくだい)なコストがかかることが判明した。
これについては、「核ミサイルを防ぐための迎撃による一定の被害は免れない」という説明が必要だったと思う。いずれにしても、こうした的外れな論点に終始してしまったということは、導入に向けての体制が不十分だったと言わざるを得ないだろう。
とはいえ、イージス艦を運用する海上自衛隊にこれ以上の負担は強いられない。運用に精通するスタッフによって代替案を模索し、陸自もミサイル防衛を担う方向で進めるべきだ。