【コロナ禍が生む「嫌日外国人」】#8
政府が支給を進める「特別定額給付金」の10万円は、留学や就労などで3カ月超の在留資格を有する外国人も受け取れる。だが、日本に長く住んでいながら、給付金を受け取れない外国人がいる。今年3月に日本語学校を卒業した後、コロナの影響で母国へ帰国できなくなっている留学生たちだ。
ベトナム人留学生のクオン君(25)もその一人。日本での大学進学を希望していたが、在籍先のA日本語学校から進学に必要な証明書の発行を拒まれて、ベトナムへの帰国を決めた。
A校が証明書を発行しなかったのは、留学生に系列のB専門学校への内部進学を強要し、学費を稼ぐ目的からだ。留学生たちは多額の借金を背負い来日しており、簡単に母国へは帰れない。多くの同級生が仕方なく内部進学に応じたが、クオン君は拒んだ。
「B校は悪い学校で、入学しても学費を取られるだけ。日本に残りたかったですが、A校の言いなりにはなりたくなかった」
そしてベトナムへの帰国準備をしていた頃、コロナの感染が広がり、ベトナムへの帰国が困難になった。
この頃、入管庁は帰国困難な留学生に対し、3カ月の在留延長を認めていた。ただし、在留資格が「留学」から「短期滞在」と変わるため、定額給付金は受け取れず、アルバイトもできなくなる。その点に関し、メディアなどで批判が出た。すると入管庁は5月下旬、急きょ制度を変更し、留学生らに「特定活動」という資格を与えると発表した。6カ月の在留を許可し、給付金の支給やアルバイトも認めるというのだ。
このニュースを聞き、クオン君はすぐに最寄りの入管を訪ねたが、「特定活動」へのビザ変更は拒否された。A校の卒業証明書を持っていなかったからだ。
A校に限らず、日本語学校の多くは進学や就職をしない卒業生に対し、母国への帰国を見届けるまで卒業証明書を渡さない。証明書の発行後に留学生が日本で不法残留すれば、入管から学校の責任が問われる。そうなると新入生のビザ審査が厳しくなって、学校経営に悪影響が出るからだ。
クオン君から連絡を受け、筆者は入管庁に見解を問うた。すると一度は彼のビザ変更を拒否した当局がA校に連絡し、卒業証明書が発行されることになった。結果、クオン君に限っては「特定活動」ビザが得られた。
だが、帰国困難状態の留学生の多くは定額給付金を受け取れず、アルバイトもできない日々を強いられている。身勝手な日本語学校の犠牲になってのことである。
(出井康博/ジャーナリスト)