【政界マル秘紳士録】二階俊博・自民党幹事長 嗅覚と抜群の勝負勘、懐の深さは当代一! “永田町で最も目の離せない政治家”

自民党の二階俊博幹事長は9月8日まで続ければ、田中角栄元首相の幹事長在任記録1429日を抜き、歴代最長となる。
二階氏は、安倍晋三首相の長期政権で政治力を高めた代表格だ。二階氏の力の源泉は、政局を読む嗅覚と抜群の勝負勘といわれる。
二階氏の政治家人生は波瀾(はらん)万丈そのものである。自民党最大派閥だった田中派で初当選。その後、自民党を離党して与党、野党を繰り返してようやく自民党に復党した。
華やかに見える政治の世界も、水面下では、「昨日の友は、今日の敵」「嫉妬の坩堝(るつぼ)」「権力闘争」の連続である。そうした修羅場を乗り越えての今日である。巧みな政界遊泳術のたまものというほかはない。
懐の深さは当代一だ。保守系の野党議員に「もう、そろそろ、良いだろう、こっち(自民党)で一緒にやろう」と声をかけ、二階派に迎えることもしばしばである。自民党内は大反発だが、当の野党議員にとって、二階氏は「救世主」である。
人情の機微に触れた心配りもけた外れである。こんなエピソードがある。
親しい友人の娘さんの結婚式の主賓を頼まれた二階氏が新郎新婦に会った際、新郎側の主賓が勤務先の課長だと知り、自ら新郎の勤務先の社長に電話を入れ、新郎側の主賓として出席するよう段取りをつけ、あいさつしたというのだ。新婦の主賓が政権与党の幹事長で、新郎の主賓が課長では新郎家側が肩身の狭い思いする、という思いやりからであった。
「そこまでするか」とも思うが、1939(昭和14)年生まれの、残り少ない「焼け跡世代」の政治家である。そこら辺の苦労人とは「苦労」のレベルが違うのである。
二階氏の対中国姿勢には党内外から批判がある。しかし、二階氏は「中国は日本最大の貿易国だ。中国とケンカして日本国民が幸せになるのか」と単純明快にして、「超」リアリスティックな論理で一刀両断。全く意に介さない。「建前や理想でメシが食えるか」というわけだ。
さて、通常国会が閉幕すれば、政府・自民党は人事の季節を迎える。党役員の任期は9月30日まで。焦点は二階氏の処遇だ。昨年も二階氏の幹事長続投をめぐって最後まで揺れた。果たして今年はどうか。続投か、副総裁昇格か、それとも副総理級の入閣か。いずれにしても健康問題などが生じない限り「無役」ということにはならないだろう。
一方、「安倍4選なし」が強まるなかで、二階氏が次の総裁選で誰を推すかに注目が集まる。最近は石破元幹事長を「希望の星」と持ち上げ、9月の石破派パーティーでも講演する予定だ。
そうかと思えば、いまなお「安倍4選」に言及したり、変幻自在である。現時点は「白紙」なのだろう。今回も二階氏一流の嗅覚と勝負勘で、一気に流れを作ろうとしているのかもしれない。
「新政権がどうなろうと幹事長は二階氏」と予想する人すらいる。「永田町で最も目の離せない政治家」なのである。
■伊藤達美(いとう・たつみ) 政治評論家。1952年、秋田県生まれ。講談社などの取材記者を経て、独立。永田町取材三十数年。政界、政治家の表裏に精通する。著作に『新人類は検事が嫌い』『東條家の言い分』『検証「国対政治」の功罪』など多数。『東條家の言い分』は、その後の靖国神社公式参拝論争に一石を投じた。