【政界マル秘紳士録】石破茂・元自民党幹事長 最大の強み!世論調査なら「次期首相」 安倍長期政権への「逆張り戦略」は吉か凶か

最近の世論調査によれば、「次の首相に誰がふさわしいか」の問いでは、自民党の石破茂元幹事長が1位である。これが石破氏の最大の強みである。国民の直接投票による「首相公選」なら、石破首相が実現するかもしれない。
ただ、この段階での世論調査で、石破氏を支持しているのは自民党支持層ではない。むしろ、「反自民・反安倍的」傾向の人からの期待論の方が強い。これでは野党に担がれることはあっても、自民党総裁になることはできない。
国会が閉幕し、安倍晋三首相の総裁「4選なし」論が勢いを増している。つまり、少なくとも来年9月までには総裁選が行われるということだ。その総裁選には誰が立候補し、各派はどのように行動するか。
当然、石破氏は立候補するのだろう。もしそうなれば4回目の出馬である。三木武夫氏は3回、小泉純一郎氏は4回、麻生太郎氏も4回挑戦して首相になった。それだけに、石破氏も今回、心中深く期するところがあるのではないか。
石破氏がまずクリアしなければならないのは、自ら率いる派閥が19人で、総裁選立候補に必要な推薦人20人に満たないことである。つまり、立候補するためには他派との合従連携が不可欠なのである。
しかし、現時点で石破氏を積極的に担ごうという派閥は見当たらない。二階俊博幹事長を自派パーティーの講師に招いて連携を模索するが、功を奏するかどうかは不透明だ。
頼みの綱とする地方票、党員票も2012年9月の総裁選のときのような支持を得られるかどうか。幹事長や大臣から離れ、ひところに比べるとメディアへの露出度は格段に落ちた。メディアに出ようとすると、「反安倍的」言動がクローズアップされ、それは石破氏の離党経歴と重なり、伝統的な自民党支持者を遠ざけることにも作用する。
こうしてみると、現時点における総裁選情勢は決して有利とはいえない。しかし、「政界一寸先は闇」の世界である。「まさか」の「坂」が突然、出現する可能性は常にある。
「ポスト森喜朗」を争った総裁選では、小泉純一郎氏が下馬評を覆して、国民的ブームを巻き起こして当選した。「自民党の流れを変える!」との絶叫に、森政権に倦んでいた国民が反応し、それに自民党員も引きずられたのである。今回も安倍長期政権に対する「飽き」が、さらに高じることになれば、同じことが起こるかもしれない。
最近の石破氏の安倍首相に対する厳しい論評は、そうしたことを念頭においた「逆張り戦略」ともいえる。ただ、この戦略は外れたときのリスクも大きい。しかし、そうなったらそうなったときの二の矢、三の矢を用意しているはずである。
すでに石破氏は63歳。もはや青二才の理想主義者ではないのである。それくらいの懐の深さがあって当然である。虚々実々の政局が始まろうとしている。
■伊藤達美(いとう・たつみ) 政治評論家。1952年、秋田県生まれ。講談社などの取材記者を経て、独立。永田町取材三十数年。政界、政治家の表裏に精通する。著作に『新人類は検事が嫌い』『東條家の言い分』『検証「国対政治」の功罪』など多数。『東條家の言い分』は、その後の靖国神社公式参拝論争に一石を投じた。