河野太郎防衛相は15日、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画停止を発表した。
自民党などへの根回しなしの発表に、翌日の自民党国防部会などでは、防衛相経験者ら出席者から、日本の弾道ミサイル防衛網に隙が生まれるとの懸念が多く示され、「しっかり説明がなければ到底承服できない」などの声が相次いだ。また、この会議に河野氏自身が出席しなかったことも、火に油を注ぐ結果となった。
こうした事態を受けて、河野氏は17日、二階俊博幹事長が本部長を務める北朝鮮核実験・ミサイル問題対策本部の役員会に出席。「党への報告が遅くなり、大変申し訳ない。党とよく相談しながら今後の方向性を議論したい」と頭を下げた。
河野氏が計画停止を判断したのは、技術的な問題が明らかになり、それを克服するための「期間とコストを考えると(計画の継続は)合理的でない」というもの。いかにも、河野氏らしい「合理」的な運びだが、これほどの基本的な政策の変更は、与党と一体になって進めなければ不満の声が上がるのは当然だ。政治に限らずに、日本の社会では良くも悪くも「根回し」が重要なのである。
河野氏は政界有数の論客であり、雄弁家だ。これまで相手を論破することで存在感を誇示してきた。半面、さまざまな利害や立場を調整し、関係者の合意を得るのは、けっして得意な方ではなかった。今回はその弱点がはしなくも露呈した形だ。
河野氏は1996年の総選挙で初当選。以来、当選8回を重ねてきた。最大の後見人は麻生太郎副総理兼財務相。神奈川県つながりの菅義偉官房長官とは同期当選である。
若いころから頭角を現し、すでに国家公安委員長、外相と入閣を果たし、今回の防衛相は3回目の閣僚就任である。あとは経済閣僚と自民党三役のどれかを経験すれば立派な総理候補だろう。現在57歳。河野派率いた実力者、河野一郎氏を祖父、党総裁や衆院議長を務めた洋平氏を父に持つ。河野家悲願の総理就任の期待がかかるのも当然だ。
実は、河野氏はすでに自民党総裁選への出馬経験がある。自民党が野党になった2009年の総裁選に谷垣禎一、西村康稔両氏とともに出馬し、堂々の2位を獲得している。その意味で、すでに「総裁候補」の資格を得ていると言えるかもしれない。
ことを為すには「天の時、地の利、人の和」が必要とされる。「地の利」が「安定した選挙区」だとすれば、河野氏の選挙区は万全で「地の利」はすでに得ているといえる。
今回の「イージス・アショア」の配備計画停止を教訓に、人の話に耳を傾けることや、意見を調整することを会得すれば、自ずと、残る「天の時」「人の和」もついてくるのではないか。
■伊藤達美(いとう・たつみ) 政治評論家。1952年、秋田県生まれ。講談社などの取材記者を経て、独立。永田町取材三十数年。政界、政治家の表裏に精通する。著作に『新人類は検事が嫌い』『東條家の言い分』『検証「国対政治」の功罪』など多数。『東條家の言い分』は、その後の靖国神社公式参拝論争に一石を投じた。