新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、従来の選挙活動が一変した東京都知事選(7月5日投開票)。「密」を回避するため、各陣営では街頭演説などを自粛する傾向がみられ、選挙期間中と感じさせないほどに街は静かだ。有権者は「感染防止に配慮してくれている」と歓迎する一方で、「演説を聞かなければ判断できない」との声も聞かれた。
「こんなに静かな選挙は初めてだ」
6月29日午後、「おばあちゃんの原宿」で知られる豊島区の巣鴨地蔵通り商店街で、老舗のかばん店を営む木崎禎一さん(53)は驚いた様子で語った。
「とげぬき地蔵尊」もあり、たくさんの中高年が訪れる同商店街。験担ぎの意味でも、選挙の度に主要な候補者はここで演説を行ってきた。ところが、木崎さんは6月18日の告示から主要な候補者の演説を1人しか見ていない。その候補者も商店街の入り口で演説を行っただけで、商店街を歩きながら支持を訴える「練り歩き」はしなかった。木崎さんは「コロナの流行が完全に収束していない中、ありがたい配慮だった」と話す。
一方、候補者の顔が直接見えないことで、判断に戸惑う有権者もいる。近くに住む女性(80)は、選挙の際にはいつも商店街で演説を聞いて投票の判断材料にしていた。女性は「候補者の人間性や都政に対する思いは、直接触れないと分からない。陣営には感染防止対策を図った上で、できる限り演説をしてほしい」と求める。
約400の店が並ぶ「戸越銀座商店街」(品川区)。後藤
蒲鉾
( かまぼこ ) 店店長の後藤学さん(58)は「感染防止には良いが、演説を行う候補者の姿があまり見られない。主張を聞き比べられず、残念だ」と話した。
普段通りの選挙活動を各地で行っている候補者もいる。JR蒲田駅前で、ある候補者の演説に耳を傾けていた主婦(36)(大田区)は、「直接話を聞くと、訴えたい内容がしっかり伝わってくる」と話す。ただ、肩が触れあいそうなほどに密集している聴衆の姿も。すし店経営の男性(38)(同)は「候補者はコロナ対策を重視すると訴えていたが、聴衆の間で密が起きており、少し不安な気持ちになった」と話した。