月刊経済誌「ZAITEN」(公称4万部)が8月号(7月1日発売)で、『さらば! 安倍晋三 「アッキーと消えてくれ」30人が憤怒の退場勧告』と題し、経済誌的では異例とも言える特集を組んだ。
古賀茂明氏、上野千鶴子氏、島田雅彦氏、佐高信氏らへの取材をはじめ、<「ポスト安倍」期待ナンバーワン・石破茂インタビュー><珍写真で振り返る「永遠の幼児」のおバカな思い出>など、安倍首相をこき下ろす特集は30ページに及んでいる。
ZAITENは記事をネット配信していないため知らない方も多いだろうが、 1957年創刊の月刊経済情報誌。「財界展望」という旧名が示すように、今どきのネット記事ではお目にかかれいような辛辣な財界・企業スキャンダルを毎号掲載し続け、かつては「噂の真相」の経済版と評されたこともある(「噂の真相」は2004年に休刊。それ自体知らなくてピンと来ない方も多いかも)。月刊経済誌が次々休刊するなか、したたかに生き残っている。
安倍首相は“モリ・カケ・桜”をはじめとするさまざまな疑惑への説明責任を果たさなため、文句を言いたくなる気持ちは理解できるものの、なぜ経済情報誌で安倍首相批判を“直球”特集したのか。編集長の真鍋亮雅氏(41歳)に狙いを聞いた。
「小誌は企業や経営者のスキャンダルを取り上げるニッチでマニアックな得体のしれない月刊経済誌と思われているかもしれません(苦笑)。しかし基本的なテーマは企業・組織のガバナンス(統治)のありようや、経営者の倫理観を問うことにあると思っています。第二次安倍政権発足から7年半が経ちました。経済的な視点から見れば、アベノミクスの成否を問うという話になりますが、倫理的に見れば、安倍一強が招いたモラルハザードの問題が非常に重大だと考えます。モリカケやサクラの問題が追及された際に詭弁が用いられ、隠蔽が行われたのは、衆目の一致するところでしょう。
一強であるがゆえに、問題が発生すると嘘で強行突破しようとする姿勢は、企業社会についても同じです。近年、会長や社長といったトップによる一強支配の広がりを強く感じます。その結果として、社内で異論を持つ者が排除され、モラルハザードが著しく進み、組織が抱える問題は大きくなるばかりです。今回のコロナ禍でも安倍政権がいかに脆弱で、いかに無能かが国民の目に明らかになりました。こういった問題意識から経済情報誌と呼ばれるジャンルの小誌でも、安倍政権を批判的に取り上げました。ただ、どの企画も編集部としては、部員たちが『変だな』と素直に思ったことを取材し記事にしているだけに過ぎません」
振り返るとZAITENは、<安倍をたらし込む『新型政商』の正体 幻冬舎 見城徹 この顔に気をつけろ!>(2018年1月号)と題する特集で安倍首相を側面から“口撃”した。このときには自分の批判には訴訟を起こさないといわれてきた見城氏の虎の尾を踏み、訴えられている。本件は係争中だが、同誌は2019年8月号で<幻冬舎・見城徹「しゃべりすぎた男」>と再び特集。
一方、同年9月号では<学者政商 竹中平蔵>とパソナをとりあげ、今年3月号では広告一強といわれて久しい電通を、<溶解する電通 自壊する”強欲代理店”>と特集。両者は6月に発覚した経済産業省の持続化給付金事業で仲良く顔を揃えていたメンツである。
強いから噛みつくという姿勢は、やはり大事ではないだろうか。
(取材・文=平井康嗣/日刊ゲンダイ)