熊本県南部を襲った豪雨の被災地に、行方不明者の生存率が急激に下がるとされる「72時間」が迫っている。しかし、豪雨から3日目の6日は九州全域が大雨に見舞われ、捜索活動は難航。不明者を知る人たちは再会を祈り、雨を恨んだ。地域を結ぶ道路の寸断も続き、同県球磨村では職員が集まれずに住民の安否確認も進まない。被害の全容がつかめないまま、被災地に無情の雨が降り注いだ。
同県津奈木町福浜地区では6日午後1時ごろ、土砂崩れで押しつぶされた自宅にいたとみられる丸橋ミチ子さん(83)と長男貴孝さん(58)の捜索活動が再開された。午前中は猛烈な雨で現場周辺の道路が膝下あたりまで冠水し、2次災害の恐れがあったため作業に着手できなかった。消防団員らは雨が小康状態になるのを待っていた。
近所の住民によると、丸橋さん方は、ミチ子さんと夫勇さん(85)、貴孝さんの3人暮らし。激しい雨が降り続いた4日午前4時ごろ、丸橋さんの自宅近くで「ドーン」「バリバリ」という音が響き、泥臭いにおいが漂ったという。夜が明けると、丸橋さんの自宅は跡形もなく流されていた。勇さんは住民らが土砂をかき出して救出したが、その後、死亡が確認された。
ごう音が土砂崩れだったのなら、7日午前4時ごろが被災から72時間となる。
午後に捜索活動を再開した自衛隊や警察、消防などは170人態勢で現場に入り、泥まみれになりながら土砂や倒木を取り除いた。
ミチ子さんのおいの鬼塚栄次さん(60)は捜索を見守った。4日は貴孝さんの誕生日で「何でこんなことになったのか」と悔やむ。「(発見されたのが)伯父(勇)さん一人だけではかわいそう。早く見つかってほしい」と願った。
同県球磨村で自宅が浸水し、熊本市の孫宅に避難している70代女性は、村で行方不明になっている愛甲泰治さん(81)、妻和子さん(78)と「親戚のような付き合いをしてきた」と振り返る。1週間前にキュウリを分けたところ、和子さんからお礼の電話をもらい、長話をしたばかりだった。同じく行方不明の川口豊美さん(73)の家にもよく遊びに行き、飲食を共にした。72時間が迫る中「私たちにはどぎゃんもできん。どぎゃんかならんか、どぎゃんか……」と声を震わせた。
同県芦北町の天月地区では、氾濫した球磨川に流されたとみられる90代女性を自衛隊や消防が捜索した。
女性は、球磨川沿いの2階建て住宅で1人暮らしをしていたとみられる。女性宅は天井まで浸水し、水が引いた後に近所の住民が捜したが、行方が分からなくなっている。実家が女性宅の隣にある同県八代市の女性は「元気な人。無事でいてほしいが……」と語った。【城島勇人、栗栖由喜、中里顕、浅野翔太郎】