盗撮行為をしている人物を見つけ、金品を脅し取る手口が首都圏の駅などで相次いでいる。「盗撮ハンター」と呼ばれるグループで、男が警察官さながらに盗撮犯を現場で確保し、女が被害者になりすまして示談金を要求するなど、巧妙に役割分担して犯行に及んでいる。脅された人は恐喝と気づいても、後ろめたさから事件を相談できず、被害が表面化しにくい傾向もあり、警察は警戒を強めている。(松崎翼)
■警察官さながら
「今、盗撮したよね」。5月12日昼。新型コロナウイルスの影響で閑散とした池袋駅(東京都豊島区)構内の階段で男が声をあげ、男性の右腕をがっしりとつかんだ。男性はこの時、女性のスカートの内側をデジタルカメラで盗撮。男性を取り押さえたマスク姿の男は、野原大輔被告(30)=恐喝未遂罪で起訴=だった。
「係員が来るので、そこで待ってて」。野原被告は突然の出来事に戸惑う被害者の女性にも優しく声をかけた。堂々とした振る舞いに、男性は本物の警察官だと思い込んでしまった。
「お前撮ったんだろ。話聞こうか」。言葉を畳みかける野原被告。改札を出た2人が近くの公園に向かうと、別の男もついてきた。
「今、被害者とつなぐから」。野原被告から男性がスマートフォンを受け取ると、通話相手の女が問いかける。「いくら持ってるの」「罰金100万円ぐらいだから、示談するならそれぐらいかな」。被害者を装った共犯だった。動揺する男性は、このとき、野原被告らが警察官ではないらしいことに気づいた。
それでも、事を収めたい男性は示談に応じる。「これだけしかありません」。現金6万7千円を手渡そうとしたところで、警視庁池袋署員が偶然、近くを通りかかった。「薬物取引ではないか」。怪しんだ署員が近づくと、3人は一目散に逃走。野原被告は取り押さえられ恐喝未遂容疑で逮捕、男性も確保された。
■発覚は氷山の一角?
標的となった男性は、都迷惑防止条例違反容疑で書類送検された。調べに「盗撮したので捕まりたくなかった」と供述。一方、池袋署は5月に池袋駅周辺で発生した同じ手口の恐喝未遂事件にも関与したとして野原被告を再逮捕。6月27日には、野原被告の仲間とみられる飯塚毅容疑者(50)も恐喝未遂容疑で逮捕した。
正義を盾に、金を脅し取る手口。盗撮犯の負い目につけこむ盗撮ハンターの犯行は表面化しにくい。池袋駅を舞台とした同様の事件は平成30年5月~6月にも連続発生し、容疑者が逮捕されている。警視庁などは被害の拡大に警戒を強める。
捜査幹部は「警察が把握できていない被害も多いはず。池袋だけでなく、他の繁華街にもハンターがいるのだろう」と懸念し、「盗撮をする者がいればハンターも生まれる。盗撮行為そのものの抑止につなげていきたい」と力を込めた。