学校法人「森友学園」への国有地売却を巡る財務省の文書改ざん問題で、自殺した近畿財務局職員、赤木俊夫さん(当時54歳)の妻雅子さん(49)が、国と同省理財局長だった佐川宣寿氏(62)に計約1億1000万円の賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が15日、大阪地裁(中尾彰裁判長)であった。雅子さんは意見陳述で「夫が自ら命を絶った原因と経緯を明らかにしたい。事実をありのままに話してほしい」と話し、佐川氏らに法廷で証言するよう求めた。国と佐川氏側は争う姿勢を示した。
雅子さんは午後2時ごろ、紺色のスーツ姿で法廷に入った。かばんには夫の写真をしのばせて臨んだ。
「夫は震える手で遺書や手記を残してくれた。事実を公的な場所で説明したかったという夫の遺志を継ぐために訴えた」。冒頭、雅子さんはしっかりした口調で、提訴理由を述べた。公務員の仕事を誇りにしていた赤木さんが、改ざんに関与させられ自責の念に襲われていたと明かし、「夫の手記は国民の皆さんに残した謝罪文」と表現した。
続けて、再調査に後ろ向きな安倍晋三首相や麻生太郎財務相について、「夫のことを切り捨てた」と批判。改ざんの過程を赤木さんが記録したファイルがあることを、財務局職員から告げられたと明かし、「財務省の報告書には、このファイルの記載がない」と指摘して再調査を求めた。
学園を巡っては、2017年2月、財務局が鑑定額から約8億円値引きして国有地を売却していたことが表面化。学園が設置を計画した小学校の名誉校長に、安倍首相の妻昭恵氏が就任していたことで国会が紛糾した。翌年3月、財務省による改ざんが発覚した直後、赤木さんは自殺した。
雅子さんは、自身や妻の関与を否定した安倍首相の国会答弁が改ざんの発端になったことに触れ、「首相は逃げているのではないか。真相解明に協力してほしい」と強調。昭恵氏にも売却の経緯を明らかにするよう求めた。佐川氏や財務省の幹部らにも「事実を話して」と呼びかけた。
「私は真実が知りたい」。涙で時折言葉を詰まらせながら、「最期の夫の顔は絶望に満ちあふれ、泣いているように見えた」と語り、裁判所には「たくさんの資料と尋問で事実を明らかにしてほしい」と求めた。
国側は次回の弁論で詳しく主張を述べるとし、佐川氏側は「公務員個人は責任を負わないとする判例が確立されている」と反論した。【伊藤遥、藤河匠】
改ざん指示、誰がなぜ「佐川氏は証言すべきだ」
裁判では改ざんを誰が、なぜ指示したのかが最大の焦点になる。佐川氏や財務省幹部らが法廷で証言するかも注目される。
財務省は2018年に公表した報告書で、佐川氏が「改ざんの方向性を決定付けた」としたが、指示の有無は明言しなかった。また安倍晋三首相が国会で「私や妻が(国有地売却に)関係していたら首相も議員も辞める」と答弁したことが「契機」になったと認めたが、政権の関与や改ざんの動機は不明なままだ。
この問題を巡っては、調査や情報開示に後ろ向きな国の姿勢が際立っている。雅子さんは20年6月、第三者委員会による調査を求めて約35万筆の署名を提出したが、安倍首相や麻生太郎財務相は拒否。近畿財務局は、赤木さんの死を公務災害と認定した文書の開示決定を1年も先送りした。別の訴訟では、学園との交渉記録を開示しなかった国の姿勢を大阪地裁が「意図的で悪質」と批判した。
元文部官僚の寺脇研・私立京都芸術大客員教授は「財務省の報告書は不十分で改ざんの原因を隠しているとの疑念が拭えない。佐川氏は法廷で証言すべきで、首相も再調査して国民に説明する責任がある」と話す。【松本紫帆、山本康介】