2020年7月22日から政府が始めようとしている観光支援策「Go Toトラベル」キャンペーンに地方や医療界から猛反発が起こっている。
東京などの首都圏や、大阪などの近畿圏で続く新型コロナウイルスの感染を、旅行者が地方に拡散せることを恐れる知事らが多いのだ。
ツイッターでは「♯Go Toキャンペーンを中止してください」というハッシュタグが登場して、トレンド入りした。これほど猛反発が起こっているのに、なぜ政府は強行しようとするのか。主要紙の論調から読み解くと――。
青森県むつ市長「国や県が何をやろうが、市には市民を守る責務がある」
7月14日~15日付の主要新聞の報道を総合すると、「Go Toキャンペーン」に反発する各自治体の首長の反応は、次のとおりだ。
「Go Toキャンペーン」政策を一番痛烈に批判したのは宮下宗一郎・青森県むつ市長だ。2014年6月、前市長だった父親の急逝を受けて市長選に初当選したが、前職は国土交通省の課長補佐だから、「Go Toキャンペーン」の推進役である古巣に先頭を切って叛旗を翻した形だ。
宮下市長は7月13日に、記者会見でこう訴えた。
そして今月下旬の4連休に向け、むつ市内のキャンプ場など観光施設を閉鎖する方向で検討すると明かした。市内には感染症に対応できる病院が1か所しかなく、ベッドも4床だけ。それゆえ、こう宣言したのだった。
菅義偉官房長官から「(東京の感染拡大は)圧倒的に『東京問題』だ。北海道は知事と市長が連携によって、大部分を封じ込めている」と、暗に東京都の知事と23区長の連携不足を批判された東京都の小池百合子知事も「Go Toキャンペーン」について、こう皮肉を効かせた。
このほか、各県知事からこうした批判や苦言が相次いだ。
吉村美栄子・山形県知事は、
と、全国一律ではなく、地方の権限に委ねてほしいと訴えた。
村井嘉浩・宮城県知事も、
と感染の地方への広がりを心配し、鳥取県の平井伸治知事も、
と疑問を投げかけた。
吉村洋文・大阪府知事は、
と、まずは近隣県ごとから始めていくべきだとした。
さらに、豪雨の被災地の蒲島郁夫・熊本県知事も、
と、県外から感染者が入ってくることに警戒した。避難所では、感染防止にために「3密」にならないよう苦心している真っ最中だからだ。
「東京の業者が潤うだけで、地方の観光地にはプラスにならない」
主要紙の社説も、こうした知事たちの声と同様に全国一律の「Go Toキャンペーン」開始に反対しているところが多い。
毎日新聞社説(7月14日付)「Go Toトラベル 全国一斉の実施は不安だ」は、こう指摘する。
本来、感染収束後にやるべき経済対策ではないか、感染が収束したといえる状況か、というわけだ。
産経新聞社説(7月14日付)「Go Toトラベル 首都圏の対象除外考えよ」は、もっと厳しく批判する。
観光業者は、どう思っているのだろうか。各新聞とも観光業界の反応を特集しているが、「もろ手を挙げて大歓迎」という声は少ない。「客足が戻らないと大変なことになる」と歓迎する一方で、「観光客のせいで感染者が増えては元も子もなくなる」という不安とが相半ばする声が大半だ。
そんな中で、朝日新聞(7月15日付)「Go To戸惑う観光業者『地方の救済になるか疑問』岩崎芳太郎・鹿児島商工会議所会頭」が興味深いインタービューを載せている。
鹿児島商工会議所の会頭で、ホテルやバスなどの事業を展開している岩崎芳太郎氏が、「Go Toキャンペーンは東京近辺の一部の業者が潤うだけで、地方の観光地にはプラスにならない」というのだ。岩崎氏はこう語る。
その理由として、「旅行の需要は心理面に左右される」という。地方の観光地で最もカネを使ってくれるのは、東京などの大都市圏から来る人たちだ。しかし、この(感染拡大の)状況で、わざわざ遠くの観光地まで足を運ぶだろうか? 首都圏の人なら、東京ディズニーリゾートに泊まったり、箱根や熱海に行ったりするのではないかと、岩崎氏は分析する。
困っている人にきちんとお金が行き渡る、実際の運用面を考えるべきだと指摘するのだった。
(福田和郎)