事故などで失った手足がまるで存在するかのように感じて痛む「幻肢痛(げんしつう)」の患者に、実在する方の腕の映像を見せながら、その腕を動かそうとする脳信号を送るリハビリを実施したところ、短期間で痛みを緩和させることに成功したと、大阪大の柳沢琢史教授(脳神経外科)らのグループが発表した。成果は米科学誌「ニューロロジー」電子版に17日、掲載された。
幻肢痛は、けがや病気によって四肢を切断したり、神経が損傷して動かせなくなったりした人が痛みを感じる病気。鎮痛剤は効かず、既存の治療法では長期間のリハビリなどが必要とされるが、有効な治療法は確立されていない。うずくまるほどの激痛を伴うこともあり、仕事や日常生活の障害になっている人も多い。
柳沢教授らのグループによるこれまでの研究で、幻肢(失われた手足)を動かそうとする脳信号が強まると痛みが悪化する一方、実在する手足への脳信号が強まると幻肢関連の脳信号が弱まり、痛みが緩和することが分かっており、治療法の開発が進められていた。
今回の研究では、腕を失うなどして幻肢痛を訴える患者12人にリハビリを実施。右腕を失った患者の場合、自分の左腕が動く様子の映像を見せながら、実際に左腕を動かそうとする脳信号を送ってもらい、痛みの低減がどの程度続くのか確かめた。リハビリを3日間行ったところ、9人の痛みが低減。従来の治療法で痛みが弱まらなかった患者2人にも効果があった。また、12人の平均では、リハビリ終了から1日後の痛みは32%、5日後は36%軽減され、持続的に緩和することが示された。
柳沢教授は「短いリハビリ期間でこれまでより広範囲の患者に同程度の痛みの軽減がみられた。臨床応用を進め、幻肢痛で苦しむ患者たちを助けたい」と話している。【近藤諭】