奈良県宇陀市は21日、市立病院事務局の男性職員(当時59歳)が今年2月に自殺していたと明らかにした。市は内部調査で「業務の負担が過大で、その過程でハラスメントと思われる上司などからの厳しい叱責や指導があった」と、自殺と業務やパワハラとみられる行為との因果関係を認定。また、職員が疲弊した要因の一つに「前市長と議会との政治的対立」を挙げた。
市によると、男性職員は当時、病院事務局の情報システム管理室長として、2018年に発生した電子カルテのウイルス感染問題の事後対応に当たっていた。市は遺族の意向を受けて2月から内部調査を行い、関係職員計26人に事情を聴いた。
その結果、男性職員はトラブルの報告書作成などの事務処理をほぼ一人で担っており、多大な神経を使い責任の重大さに苦悩していたことや、周囲に「八方塞がりだ」と話すなど悩んでいる様子だったことが明らかになった。市はこうしたことが自殺に至った「大きな要因」とし、その過程で上司らによるハラスメントと思われる行為があったことも認めた。一方で「遺族の意向」などを理由に行為の主体や具体的内容は明らかにせず、内部調査報告書も公表しなかった。
同市では、市有保養施設のあり方を発端に高見省次前市長と議会が対立。高見前市長は今年5月、2回の不信任決議を受けて失職し、6月の市長選で現市長に敗れた。前市長と議会の対立はこの間約2年に及び、電子カルテのウイルス感染問題も対立の火種の一つだった。
遺族は21日、市を通じて「業務によって自らの命を絶ったことへの憤りと悲しみは一生消えることはありません」とのコメントを発表。市によると、遺族は公務災害の認定を求めて申請手続きをしているという。記者会見した金剛一智(かずとし)市長は「職員を守るという組織として当たり前のことができなかったことが問題だったと認識している」と述べ、外部有識者による会議を設置して調査を続ける考えを示した。【広瀬晃子】