復旧人手足りぬ 豪雨ボランティア、コロナ禍で県内に限定

九州の広範囲に大雨が降り、大きな被害が出てから4日で1カ月。熊本県では住民らが家屋の片付けなどに追われているが、人手が足りていないという。新型コロナウイルス対策でボランティアの募集を県内在住者に限っているためだ。これまで県内だけで延べ1万7千人以上もの数は集まったが、平成28年の熊本地震の4割弱にとどまる。専門家は「復旧が遅れると、それだけ別の感染症や災害関連死の恐れが出てくる。行政は支援ニーズを見極めた対応を」と指摘する。(尾崎豪一)
「4年前の恩返し」
「熊本地震のときにボランティアにお世話になったことは忘れられない。今度は自分たちが恩を返す番」
30度超の暑さが続く熊本県人吉市大柿地区で今月1日、民家の泥かきや家財の移動といったボランティア作業を行った同県宇城(うき)市の会社員、浦田敬介さん(54)はこう話した。
今回の豪雨災害で、熊本県の被災自治体が設置したボランティアセンター(VC)は、新型コロナの感染拡大防止を図るため、浦田さんのように県内在住者のみの参加とした。この約1カ月で延べ1万7千人以上がボランティア活動に携わっており、県社会福祉協議会の江口俊治事務局長は「県民が結束して参加してくれている」と話す。
ただ、他府県からのボランティアも入った過去の自然災害とは人数で大きな開きがある。
各地の社会福祉協議会のまとめで被害からおおむね1カ月の人数をみると、同じ熊本県の熊本地震が約4万6千人▽西日本豪雨(平成30年)の広島県が約5万8千人▽台風19号(令和元年)の長野県が約4万2千人-などだった。
運営側も不足
今回は7月下旬まで雨が断続的に降り続いた。そうした状況もあり、同県は寸断した道路の復旧が難航。ボランティアが入れず、復旧作業が道半ばの地域もある。加えて高齢化がある。大柿地区は約60世帯が床上1・8メートル以上の浸水被害に遭ったが、半数が65歳以上の高齢者世帯。同地区に住む農業、才尾弘太郎さん(77)は「若い人の力は本当に必要」と訴える。
人手不足は被災現場だけでなくVC運営でも露呈した。新型コロナ感染防止のためVC運営に携わる社協職員も県内在住者に限定。復旧活動では社協の福祉活動専門員が中心になるが、同県球磨(くま)村社協では1人しかいないため、周辺の社協から応援を受けており、江口事務局長は「どこも人手が足りない。ほぼ休みを取らずに社協職員がフル回転して補っている」と漏らす。
「コロナ言い訳ならぬ」
人手不足の解消に向けた行政の動きは鈍い。県は7月17日、家屋内の土砂の撤去について、住民が業者に無料で依頼できるよう市町村への補助を決定。しかし、市町村での手続きや人繰りの調整が難航し、27日になって球磨村が、8月3日に芦北町がそれぞれ申請受け付けを始めたばかりだ。
被災者支援やボランティアに詳しい兵庫県立大大学院の室崎益輝(よしてる)教授は「泥出しやがれき処理をやり切る見通しがないまま、県外参加を断ることは被災者を見殺しにすることだ」と行政側に苦言。「泥出しが遅れると別の感染症につながり、被災が長期にわたると災害関連死が出る。行政は復旧の遅れをコロナで言い訳してはいけない」とした上で、今後の復旧に向け、「業者委託の積極的な活用や、介護やVC運営といった専門的なボランティアの県外からの受け入れを容認すべきだ」と提案している。