民俗学者で評論活動でも知られる大月隆寛氏(61)が、北海道の札幌国際大学の教授職を懲戒解雇されたのは違法として、地位保全などを求める仮処分を札幌地裁に申し立てた。大月氏は夕刊フジの取材に、北海道の外国人留学生をめぐる問題が背景にあると主張した。
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大月氏は、民俗学や民衆文化論をベースに、地方競馬やマンガなど幅広い分野での評論や言論活動で知られる。国立歴史民俗博物館助教授、国際日本文化研究センター客員助教授などを歴任し、「新しい歴史教科書をつくる会」にも一時参加。2007年に札幌国際大教授に就任した。
問題が表面化したのは今年3月。退任が決まっていた城後(じょうご)豊前学長が記者会見で、大学側が日本語能力が水準に満たない留学生を入学させたことを批判した。その会見に同席していた大月氏は、6月29日付で突然、懲戒解雇された。会見への同行やSNSで大学の内部情報を漏洩(ろうえい)したことなどを理由に挙げられたとする。
大月氏は、「会見で発言したわけでもなく、ついていってその場に同席していただけで、懲戒解雇理由の根拠がない。学校法人側が話し合いに応じる気がないため、法的手段に踏み切った」と語る。
大月氏によると、札幌国際大では定員割れの状態が続き、2017~18年ごろから外国人留学生を増やす方針をとったところ、昨年春以降、「教員の間で、留学生のレベルのばらつきが大きく、授業が成り立たないという報告が上がってきた」という。
文科省は20年度から、学位が授与される正規の教育課程で日本語で授業を行う場合、留学生は日本語能力試験で難易度が5段階中、2番目に難しい「N2」レベル相当以上が目安としている。
当時はこの目安は設けられていなかったが、大月氏は「自前で日本語能力テストを実施すると、どうみても『N2』能力のない生徒が半分近くいることが分かった」と振り返る。
大月氏は留学生の在籍管理などのフォローについても、「本来、ゼミの教員など教学側が把握すべきだが、事務方が一括して教学側に情報をあげていなかった時期もある。特定の科目のみを履修する科目等履修生も、正規の学生といっしょくたにしていた」と指摘する。
大月氏は「高校の先生や生徒、保護者らも含めて地元の人はこうした状況をよく見ている。いま在籍している学生たちもたまったものではないだろう」と憂える。
これに対し、札幌国際大の事務局担当者は、「日本語留学試験や日本語能力試験を受けられなかった学生も、救済の意味で本学の独自の筆記試験と入学の面接試験、書類選考を行ったうえで入学させた」と説明。在籍管理についても「徹底している」と強調した。
大月氏の解任理由については、「記者会見は最後の手段で、万が一不正があったというのなら、北海道庁や文部科学省の担当に行けばいい。同行した先生の罪はどんなに重いか。軽く考えてはいけない」と述べた。
前出の大月氏は、北海道の外国人留学生をめぐる状況についてこう話す。
「留学生は大半が中国人だ。専門学校生ビザで日本語学校に来て、『N2』レベルに達せずビザの切れた学生をいったん帰国させ、今度は改めて大学生として受け入れさせる『ビザ・ロンダリング』のようなことも起きている。日本語学校を転々としてきた30代の学生もいる」
問題の根は深いのか。