分裂5年で風雲急告げる山口組騒動、離脱・解散情報の真偽

三つどもえの争いが続く山口組の分裂騒動は勃発5年の節目を前にして重大局面を迎えている。ともに特定抗争指定暴力団として激しく対立する六代目山口組(神戸市灘区)と神戸山口組(同市中央区)。その神戸側の中核組織「山健組」が傘下から離脱し、旧山口組3団体の中で最小勢力の指定暴力団絆會(兵庫県尼崎市)が近く解散する-というのだ。真偽は警察当局が依然確認中だが、神戸側と絆會では近年、組を見限り六代目側へ復帰する組員が相次ぐ。六代目側が勢いづく可能性もあることから当局も警戒を強めている。
上納に不満か
山健組が分裂する-。7月上旬以降、組社会に衝撃の情報が走った。複数の関係者の話を総合すると、山健組の中田浩司組長=殺人未遂罪で起訴、勾留中=が神戸山口組を離れて山健組を独立組織とし、健竜会といった同組傘下の主要組織が付き従うのだという。
山健組といえば、山口組の渡辺芳則5代目組長の出身母体。神戸・三宮の繁華街から一駅離れた花隈地区を拠点に一時は1万人の組員を抱え、「山健組にあらざれば山口組にあらず」とまで言わしめたほどの“名門”とされる。
ところが、警察当局による規制強化でシノギ(資金獲得活動)が困難となり、平成27年8月の山口組分裂で神戸側傘下に移ってからは、組員の離脱に歯止めがかからず、現在は700人程度とされる。
関係者によると、山健組には会費(上納金)とは別枠で、毎月300万円の上納が課せられており、カネへの不満が離脱騒動の背景にあるとされる。神戸側の別の組幹部が仲裁に入って残留を促したが、決裂。7月下旬には正式に離脱したとの情報が飛び交った。
警察幹部は「山健をめぐるさまざまな情報に接しているが、真偽の確認を含めて必要な作業に当たっている」と話しており、警察当局は慎重に情勢把握を続けている。
離脱の流れ止まらず…
騒動の余波は、神戸山口組の別の傘下組織にも及んでいる。
7月下旬、かつて岡山で繁華街の夜を取り仕切り、不動産ビジネスで巨額の利益をあげた池田組(岡山市北区)も、神戸側を離脱したとの情報が流れたのだ。池田孝志組長名で関係先に送付されたとされる7月28日付の挨拶文には、こうつづられている。
「諸般の事情に鑑み、神戸山口組を円満に脱退致しました」「今後は池田組と致しまして侠道に邁進(まいしん)致す覚悟で…」
池田組長は山口組分裂騒動で、神戸側の結成を主導した組幹部の一人。ある関係者は「池田組では過去2度にわたり組ナンバー2の若頭が六代目側に襲われたが、神戸側の支援を得られず井上邦雄組長との関係は冷え切っていた。円満離脱とあるが、実際は違う」と説明する。
挨拶文では、池田組が「一本独鈷(いっぽんどっこ)」の独立組織となることをほのめかすが、上部組織を失えば六代目側をはじめ対立組織の襲撃を受ける可能性も高まってしまう。
関係者によると、こうしたリスクを回避するため、池田組では29年4月に神戸側を離脱して先に独立した絆會側と“同盟関係”を結んだ、との情報もあるという。
六代目側“一強”に
神戸山口組の内紛とは別に、結成から3年以上が過ぎた絆會でも、六代目側への復帰や解散といった噂が絶えない。捜査関係者は「組の運営が難しくなり、いよいよ解散するとの情報だったが、池田組との協調で当面存続するようだ」と分析する。
神戸側と絆會の内部のゴタゴタを横目に、六代目側は“一強”状態で勢力の拡大を続ける。
警察庁のデータでは、昨年末時点での構成員と準構成員らの数は、六代目側が約8900人。約3千人の神戸側、約610人の絆會を数で圧倒している。
山口組の分裂騒動からまもなく5年。六代目側はこの間、表と裏の経済に浸透し、豊富な資金を蓄えたとされる弘道会を中心に、神戸側の組員引き抜きや弱体化工作を進めてきた。
捜査関係者によると、六代目側は5年前の分裂を主導した組員らを除き、かつての離脱を悔い改めれば、基本的には復帰を受け入れる方針という。
ある神戸側関係者は「多くの組員がカネに困っており、主要組織の離脱が進めば神戸側崩壊の可能性もある」と危機感を強調。その上で「傘下組織の六代目復帰は許せないが、生き残るためには仕方ないのかもしれない」とつぶやいた。