コロナで訓練不足、「平和の象徴」飛び立てず…原爆忌の放鳩中止

原爆忌の6日に営まれる平和記念式典で、数百羽のハトを空に放つ恒例行事が、新型コロナウイルスの影響で中止されることになった。外出自粛が求められていた時期などに、ハトが

鳩舎
( きゅうしゃ ) に戻る訓練が十分にできなかったためだが、「平和の象徴」が不在の式典となることを惜しむ声が出ている。(内田桃子)
式典を主催する広島市によると、「

放鳩
( ほうきゅう ) 」と呼ばれ、1947年の「第1回平和祭」(現・平和記念式典)で、被爆者らがハト10羽を持ち寄って空へ飛ばしたのが始まりとされる。
記録が残っていない53年と、大雨だった2014年を除き、毎年行われてきた。
現在の式典では、平和記念公園(広島市中区)で広島市の市長が平和宣言を読み上げた後、一斉に放たれる。「宣言が世界に届くように」との願いが込められているという。
例年式典で放たれるのは、数百キロ離れた場所から鳩舎に戻るまでの早さを競うレースに出場するために訓練されたハト。「日本鳩レース協会中国地区連盟」などに加盟する県内の複数の愛好家が、式典前に市に預けてきた。
ハトには帰巣本能が備わっているが、遠距離の場合、定期的に訓練されていないと鳩舎まで戻るのが難しいとされる。今年はコロナの影響でレースが中止されたほか、愛好家が訓練のために遠出できなくなり、市が対応を検討。
愛好家の中には「続けたい」と希望する人が多かったが、市が中止を決めた。
広島市は「式典前のハトの受け渡しなどで人の接触が増える恐れもある。来年は実施したいが、今後もハトの訓練ができるかは見通せず、式典が近づいた段階で判断したい」としているが、胎内被爆者の迫

青樹
( せいじゅ ) さん(74)(広島市佐伯区)は「毎年公園に行き、式典で飛び立つハトを見て祈りをささげてきた。大切な時間であり、すごく残念だ」と話した。
長崎でも9日の「原爆の日」の式典で毎年、ハトが放たれるが、長崎市は愛好家団体と協議した結果、中止せずに例年通り行うという。