動物の新型コロナウイルス感染に注目が集まっている。ペット保険「アニコムホールディングス」は、感染した飼い主から預かった犬2匹が、国内のペットでは初めてPCR検査で陽性が確認されたと3日に公表。海外では犬や猫の感染例もある。上野動物園などに、動物への感染防止対策について聞いた。
米ニューヨーク市の動物園では、4月にトラの新型コロナ感染が判明した。飼育員から感染したという。日本の上野動物園は、新型コロナの影響で約4か月休園し、6月から再開。その際、冨田恭正副園長は「海外の(動物の)感染事例は職員から。まず職員の健康管理をしっかり行う。(動物と接する時は)きれいな服で、靴も消毒し、履き替えもしている」と対策を語っていた。
同園の担当者は「コロナ前から消毒など人獣共通感染症に気を付けている。霊長類のゴリラなど、(人間と感染症の)かかりやすさが似ている可能性のある動物もいる。コロナウイルスを持ち込まないように、職員を時差出勤にしたり、A、B班に分けて完全入れ替え制にして、職員同士がなるべく接触しないようにしている」と説明。万が一、どちらかの班で感染者が出ても、もう一方の班で補えるように工夫している。
「アニコム―」が犬2匹の陽性を公表したことを受け、小泉進次郎環境相は4日に「ペットから人への感染は現時点でどの国でも確認されていない」と強調した。同社によると、犬は陽性の結果が確認されたものの、感染が成立したかまでは判断できず、1~2週間後の抗体検査の結果を待つ必要がある。
また、海外からの報告などで、犬は猫に比べて感染例が少なく、研究でも感染が起こりにくいことが判明。一方で、猫同士では感染伝播が起こることも分かっているという。同社はペットの感染防止について「飼い主自身の予防が最も効果的であるとされています。ペットにマスクをさせるのは、誤飲や呼吸困難の恐れがあるため推奨されません」などと呼び掛けている。(竹内 竜也)
◆動物と感染症
動物と人が共通して感染する病気は、世界保健機関(WHO)が把握するだけで200種類を超え、日本でも数十種類ある。動物から人への感染症は犬にかまれてかかる狂犬病、は虫類に触れてかかるサルモネラ症、鳥のふんからうつるオウム病などがある。新型コロナウイルスはコウモリから食用動物を介して人に感染したとみられている。感染症が人から動物にうつった確認事例は少ないが、口唇ヘルペスの原因となるウイルスでサルが死亡したことがある。