なぜクラスター発生 3分の1が感染の天理大ラグビー部

全国有数の強豪として知られる天理大(奈良県天理市)ラグビー部で、新型コロナウイルス感染のクラスター(感染者集団)が発生した。感染者は、寮で共同生活を送る部員168人の約3分の1に当たる55人。部は感染対策を講じて活動していたにもかかわらず、ウイルスの蔓延(まんえん)を防げなかった。関西リーグ4連覇中の強豪チームで何が起きたのか。
■どこで広がった?
「感染対策には十分に気を付け、8月に入ってからは合宿に向け、一層の注意喚起を行っていた。非常にショックを受けている」
産経新聞の取材に、小松節夫監督(57)はこうコメントした。
18畳の部屋が55室ある寮では168人の部員が3~4人ごとに分かれて生活を送っている。寮内には消毒液や除菌シートを設置。食堂は利用時間を分け、座席の間隔もあけていた。1人目の感染が明らかになってからは弁当を配り、各部屋で食べるよう徹底。2つある浴場には「練習を終えた部員から順次入り、一度に入浴することはなかった」(大学側)という。
部は4月から活動を休止していたが、大学の許可を得た上で6月11日から再開。8月からは日本ラグビー協会のガイドラインに沿い、20分を上限にタックルやスクラムなど接触プレーを含む練習も始めたという。グラウンドでは1日2回の検温を実施。水分補給は各自のボトルを使い、部室での会話や更衣は禁止していた。
一方、「寮の各部屋でのマスク着用までは徹底できていなかった」(小松監督)とも。県疾病対策課の担当者は「練習場と寮のどちらで感染が広がったかはまだ分からないが、相部屋の影響はあったと考えている」としている。
■リーグ戦中止も
今回の件がラグビー界に与える影響は大きい。
天理大ラグビー部が所属する関西大学リーグは10月10日に開幕予定。ただ、関西ラグビー協会は、開幕後に新型コロナの影響などで試合を棄権する大学が出れば、その時点でリーグそのものを中止とする指針を7月に理事会で定めている。
協会によると、仮に開幕前に天理大が出場辞退を申し出たとしても、残る7校でリーグを実施するか、中止とするかはまだ決まっていない。中止の場合は全国大学選手権の関西代表校を決めるため、代替トーナメント実施も検討しているという。担当者は「状況を見ながら柔軟に対応していく必要がある」と話した。
■管理・指導に限界
松江市の立正大淞南高でサッカー部の寮を中心に100人近い感染者が出るなど、寮生活に端を発する集団感染は各地で相次いでいる。ただ、対応は難しい。
文部科学省は、小中高校を対象にした学校生活の衛生管理マニュアルを今月6日に更新したが、寮や寄宿舎については宿泊施設のガイドラインを参考にするよう定めた程度だ。
文科省の健康教育・食育課は「寮は生徒や学生が共同で生活しており、家庭と同様の側面がある。国が介入し、管理や指導を行うのは限界がある」とした上で、「寮生活という教育的側面を損なわないよう配慮しながら、保健所の指導を受けるなど感染対策に努めてほしい」と訴える。
一方、立正大淞南高でクラスターが発生した島根県は、公立と私立の全46高校のうち約6割の28校が寮を併設していることもあり、県教育委員会が寮での食事中は会話を控えさせるよう、各校に通知。学校運営に関するガイドラインも改定し、寮生が体調不良を訴えたら保健所に相談するなどの内容も盛り込んだ。
天理大の小松監督は「寮生活の見直しが必要。部屋の人数などを大学と相談し、できる範囲で改善策を考える」としている。