2019年の参院選広島選挙区を巡る選挙違反事件で、地方議員らに現金を配ったとして公職選挙法違反(買収、事前運動)に問われた前法相の衆院議員、河井克行被告(57)と、妻で初当選した参院議員、案里被告(46)の初公判が25日、東京地裁で開かれる。総額約2900万円に上る大規模買収事件の構図に対し、夫妻は現金提供を大筋で認めつつも買収目的ではなかったと無罪を主張するとみられ、現金提供の趣旨が最大の争点となる。多数の証人が出廷するため、審理は越年する見通しだ。
起訴状によると、克行議員は票のとりまとめを依頼する目的で19年3月から投開票後の8月まで、計100人に約2900万円を配り、案里議員は共謀してうち5人に170万円を配ったとされる。これに対し弁護側は、19年4月には統一地方選があり、広島県議や広島市議らには「陣中見舞い」や「当選祝い」として、後援会関係者らには党勢拡大を目的として現金を配っており、買収目的ではないと反論する。
鍵を握るのが、現金を受け取ったとされる計100人の地方議員や陣営・後援会関係者らだ。多くは「買収目的だった」とする検察側の主張に沿った供述をしたとされるが、弁護側は公判で直接証言を求めて真意を確かめたい考えだ。検察側が地方議員らを起訴していないことから、弁護側は「起訴しないことを約束して供述を得る違法な司法取引があった」として裁判を打ち切る「公訴棄却」を求めることも検討している。
夫妻は7月8日に起訴され、勾留が続く。公判は公選法の規定で起訴から100日以内の判決を目指す「百日裁判」で審理される。しかし、証人は100人を超える可能性があり、東京地裁は12月18日まで55回の期日を指定した。審理は急ピッチで進むものの、判決言い渡しまで年をまたぐ見通しになっている。証人の大半は広島在住で、一部の尋問は東京、広島両地裁を映像と音声でつなぐ「ビデオリンク方式」で実施する方向で調整が進んでいる。
検察側は克行議員を、案里議員陣営の選挙運動全体を取り仕切った「総括主宰者」だったと指摘する。認められれば法定刑が重くなり、克行議員の有罪が確定すると、案里議員に連座制が適用されて当選無効となる公算が大きい。弁護側はこれについても争う構えだ。夫妻は有罪が確定すると、それぞれ失職する。【遠山和宏、巽賢司】