河井夫妻、初公判で無罪を主張 検察側と全面対立へ 公選法違反事件

2019年の参院選広島選挙区を巡る選挙違反事件で、地方議員らを買収したとして公職選挙法違反に問われた前法相の衆院議員、河井克行被告(57)と、妻で初当選した参院議員、案里被告(46)は25日、東京地裁(高橋康明裁判長)で開かれた初公判で、いずれも無罪を主張した。国会議員夫妻が計100人に約2900万円を配ったとする大規模買収の構図を描く検察側に対し、夫妻が全面対決する展開が予想される。
起訴内容の認否で、夫妻はいずれも共謀はしていなかったとした。克行議員は「私を国政に送り出していただいた多くの皆様にご心配とご迷惑をお掛けしたことについて、深くおわびする」と謝罪しつつ、「『総括主宰者』であるという点については否定する。投票や票のとりまとめを依頼する趣旨で現金を供与したものはない」と述べた。
案里議員も「選挙で応援してくれた多くの方々に大変なご迷惑をお掛けし、心から深くおわびする」とし、「夫が私の選挙運動を取り仕切っていたことは間違いない。しかし、私の当選を目的として選挙運動を依頼し、報酬として現金を渡したことはない」と述べた。
起訴状によると、克行議員は19年3~8月、計100人に現金計約2900万円を配って案里議員への投票や票のとりまとめを依頼し、案里議員は共謀して3~6月、このうち5人に計170万円を渡したとされる。克行議員は案里議員陣営の選挙全体を取り仕切った「総括主宰者」として起訴された。
現金提供は案里議員が自民党の公認を受けた19年3月から始まり、7月21日の投開票後も続いた。毎日新聞の取材では、配布先は、地方議員や首長、元議員秘書ら41人に1980万円▽後援会関係者53人に約540万円▽陣営関係者6人に約380万円。現金の配布自体におおむね争いはなく、票の取りまとめを依頼する趣旨だったかどうかが最大の争点となる。
改選数2の広島選挙区では、6選を目指した溝手顕正・元防災担当相を推す自民党広島県連の頭越しに、自民党本部が新人の案里議員も擁立。両陣営は保守分裂の激しい選挙戦を繰り広げ、溝手氏は落選した。参院選の公示前には、夫妻が支部長を務める自民党支部の口座に、党本部から計1億5000万円が振り込まれていた。溝手氏の10倍の規模だったといい、事件との関係が明らかになる可能性もある。
夫妻の公判は迅速な審理を目指す「百日裁判」で行われ、週1~4回のペースで開かれる。100人を超える証人尋問が必要になる見通しで、審理は年をまたぐ。証人の大半は広島在住で、一部の尋問は東京と広島を映像と音声でつなぐビデオリンク方式で実施する方向で調整が進んでいる。
夫妻は有罪が確定すると、それぞれ失職する。【遠山和宏】
百日裁判
公職選挙法は、選挙の当選者が買収などの罪に問われた場合、起訴から100日以内に判決を出すよう努めなければならないと定めている。当選が無効になることを想定し、迅速な審理で選挙結果を速やかに安定させるために設けられた。努力規定にとどまり、実際には100日を超えても判決は無効にはならない。