少年法「18歳未満」遠く 実名報道解禁もくすぶる不満

少年法改正を議論する法制審議会(法相の諮問機関)の部会が、改正の要綱案を9月にも承認する見通しだ。先に提示された原案では、家裁から検察官送致(逆送)される犯罪の範囲を拡大し、公判請求(起訴)されれば実名報道も可能などとしているが、適用年齢を「20歳未満」から「18歳未満」へと引き下げる判断は見送った。自民、公明両党は先行して「20歳未満」の維持で合意しており、与党の意向に沿った法改正が進みそうだが、引き下げ見送りには不満の声も出ている。(宮本尚明)
18~19歳を厳罰化
少年法改正は、選挙権年齢が18歳以上となり民法上の成人年齢も令和4年4月に18歳に引き下げられるのに伴い、議論されてきた。しかし、8月6日に提示された原案では、18~19歳について「未成熟な部分がある」とし、「18歳未満とも20歳以上とも異なる取り扱いをすべきだ」と提言された。
具体的には、罪を犯した場合、成人の刑事手続きはとらず、いったん全件を家裁送致するルールを維持。一方で、家裁から原則逆送する対象については現行の「故意の犯罪行為で被害者を死亡させた罪」だけでなく、強盗や強制性交など「短期1年以上の懲役・禁錮に当たる罪」を加える。逆送後に公判請求されれば、18~19歳でも実名や本人と推定できる住所や年齢、容貌などの「推知報道」を可能とする。
9月9日の次回部会で原案をもとにした要綱案が承認され、総会を経て法相に答申されれば、政府は来年の通常国会にも改正案を提出するとみられる。
報道規制は最小限
部会では、18~19歳は引き続き実名を禁止すべきだという声もあった。ただ、法務省関係者は「報道の自由を考えると、規制は必要最小限にしなければならない」と指摘。そのうえで「逆送時点での実名解禁は報道側がタイミングを把握しにくく、公判請求の時点での解禁になった」と経緯を明かす。
これに対し、日本弁護士連合会(日弁連)の荒中(あら・ただし)会長は「未成熟で、柔軟性があって立ち直る可能性を持つ18歳と19歳の少年の社会復帰を極めて困難にする」などと、実名報道解禁などに反対する声明を発表した。
そもそも原案は、7月30日に自民、公明両党が合意した内容にほぼ沿っている。公明の強調した「全件家裁送致」を維持し、自民が主張した「原則逆送範囲の拡大」や「起訴後の実名報道解禁」などの厳罰化も盛り込まれている。
一方、原案では、適用年齢について「国民意識や社会通念を踏まえることが求められることにかんがみ、立法プロセスでの検討に委ねる」とし、引き下げの判断自体を棚上げした。自公合意では20歳未満を維持することでも決着しており、結論を「政治判断」に任せる格好となった。
「流れ変わった」
「最初は引き下げが実現すると思っていた」。長男を少年グループの暴行で亡くし、部会にも委員として参加する「少年犯罪被害者当事者の会」の武るり子代表(65)は、3年以上に及んだ部会での議論を振り返る。
だが、日弁連だけでなく、今年に入って元裁判官有志177人も引き下げ反対の意見書を提出するなどし、「流れが変わった」という。
武さんらは「加害少年たちは、少年法に守られ名前も顔も出ないことが分かっている」として法改正を求めてきただけに、実名報道解禁については「適正化」と評価する。
一方、全件家裁送致については「これまでも家裁が加害少年の保護に偏り、逆送すべき事件を逆送しないケースがあった。今後もその恐れがある」などと批判し、18歳未満への引き下げを求め続ける意向だ。
中央大の藤本哲也名誉教授(刑事政策)は、世界の9割近くの国が成人年齢を18歳としていることを挙げ、「少年法改正後も18~19歳を少年扱いするのはおかしな話。民法上の成人年齢も選挙権も18歳なら、主要な法律の少年法も合わせるのが筋だ」と引き下げの必要性を強調。実名報道については「成人として扱うべき年齢で重大犯罪をすれば、18歳で実名が出るのは当然」と話した。