【小池都政の化けの皮を剥ぐ】#1
8月下旬、都庁では中規模の幹部異動内示が発令された。このところ相次ぐ新型コロナウイルス関連の異動かと思われたが、内示表には「構造改革担当」という見慣れない文字が並んでいた。都庁の組織図には存在しない名称である。その組織の役人トップに小池知事寵愛の人材を据えた様子を見て、彼女の気合がひしひしと感じられた。
「ついに来たか!」。今後予想される厳しい財政状況を打開するための聖域なき事業見直しに着手するのだと、てっきり思い込んでしまった。
他県がうらやむ潤沢な都財政は今、新型コロナの感染拡大で暗転し、1兆円近くあった貯金を使い果たし、先の見えないコロナ対策、景気後退による今後の税収急減、オリンピックへの追加対応――という三重苦に直面している。大幅な経費削減が不可避な状況に陥り、来年度予算が組めるかどうかも怪しいのである。
2期目の小池知事は、実質的に連立を組む会派への大甘な予算配分を1期目のように続けることはできない。1期目に連発した不要不急の事業に大ナタを振るわざるを得なくなっているのだ。
そんな中、目立ちたがりを旨とする小池知事にしては、珍しく真っ当な手を打ったものだと感心したのもつかの間、「構造改革」の中身を見て唖然とした。8月28日の午前中に開催されたキックオフミーティングによると、新型コロナの収束後も見据えて「社会の構造改革」と「都政の構造改革」を強力に進めるための特別チームを発足させて検討するというのだ。
■「仮想敵」で現実から目をそらすのが小池マジックの手法
まず、言葉が浮ついて力みかえっているのはご愛嬌としても、問題は何を検討するかだ。発表資料にあるのは、「デジタルトランスフォーメーション」や「サスティナブル・リカバリー」といった知事お得意の横文字言葉のオンパレード。また、都庁に関しては「都政のQOS」なる新語が登場した。クオリティ・オブ・サービスというらしいが、そうであれば、行政サービスの質の向上と表現すれば済む話だ。英語を使えば、都民は騙されるとでも思っているのだろうか。いい加減にしてほしいものだ。
要するに、小池知事が既に公言している「ソサエティ5.0」にコロナ禍の色合いを少々加味したに過ぎない。そんな程度のことを「構造改革」という手垢にまみれた言葉に置き替えて、さも新しいことを始めます、コロナ後の社会像を描いてみせます、と言っているだけなのだ。
既視感があった。4年前、崖から飛び降りた小池氏が都庁に乗り込んできた時、まず着手したのが「東京大改革」だった。内容は「構造改革」とは当然異なるが、手法は全く同じである。目の前の現実から目をそらし、仮想敵を設定する。「東京大改革」では都議会自民党、「構造改革」では新型コロナだ。そして、大風呂敷を広げて都民を欺く。安手の小池マジックのネタはすでにバレバレなのだが、ご本人はそのことに気付いていないらしい。
小池知事の構造改革がスタートした記念すべき日、安倍総理大臣が辞意を表明した。何とタイミングの悪いことか。まさに政局が動こうとしているその時に、「都庁、構造改革、始めま~す」もないだろう。小池知事の読みは大きくハズれた。メディアはポスト安倍一色に染まり、小池都知事の構造改革はものの見事に無視され埋没してしまったのである。 =つづく
(澤章/東京都環境公社前理事長)