「ポスト安倍」を選ぶ自民党総裁選で論戦のポイントの一つは、中央省庁の幹部人事を一元的に扱う内閣人事局の在り方だ。安倍政権下で誕生した同局は首相官邸による霞が関の掌握と政治主導の政策決定を可能にした。一方で、官邸の意向を忖度(そんたく)する空気を官僚の間に醸成したと指摘される。石破茂元幹事長、岸田文雄政調会長はそろって運用見直しを唱え、人事局を通じて各省庁ににらみを利かせてきた菅義偉官房長官は防戦に回っている。
◇色なした菅氏
「反論させてもらう。大臣を蹴飛ばして官邸で人事をやることはない。大臣の納得の上でなければ人事は行わない」。総裁選中も物静かな語り口を崩さない菅氏が、珍しく色をなす場面があった。8日のテレビ番組で、石破氏が「大臣を飛ばして官邸に駆け込む官僚がいないとは言わない」と人事局の運用を批判した時だ。
菅氏の反論に対し、石破氏は「それがきちんと行われていることが大事だ」と、菅氏の説明は実態とかけ離れていると言わんばかりに語った。
内閣人事局は第2次安倍政権下の2014年5月に発足。以来、安倍晋三首相と菅氏が各閣僚と協議し、審議官級以上の各府省庁幹部約600人の人事を差配してきた。この間、官邸に近いと当時目されていた黒川弘務元東京高検検事長の重用など、議論を呼んだ人事も少なくない。
官邸主導の人事は、次第に官邸の顔色をうかがう官僚を生んだ。森友学園問題での公文書改ざんの背景にも、財務省幹部の忖度があったと指摘される。
◇官邸主導の是正訴えも
菅氏は、こうした人事局への批判は「誤解されている部分がある」との立場だ。省庁の幹部人事は基本的に各閣僚が決めており、官邸は女性やノンキャリアを抜てきするなどのケースでしか口を挟んでこなかったと説明。人事局見直しは必要ないと強調する。
これに対し石破氏は、実際は官邸が忠誠度を基準に各府省庁の人事に介入してきたとの認識に立ち、「官邸に忠実であるより、国民にいい仕事をしたことを評価すべきだ」と主張。森友問題で「記録は廃棄した」などの答弁を繰り返した財務省の佐川宣寿理財局長(当時)が国税庁長官に起用されたことを念頭に「公文書改ざんなどに関わった人がより高いポストに就くことは絶対にあってはならない」と批判する。
岸田氏は「官僚に省益を超えて働いてもらうシステム」と人事局自体は評価しつつも、「忖度などの弊害があるのではないかと疑念を挟まれないような工夫はしなければいけない」と人事プロセスの透明化を唱える。同時に「トップダウンとボトムアップをうまく使い分けるのが賢い政治」と、行き過ぎた官邸主導の是正も訴えている。
[時事通信社]