◆菅原一秀議員、菅義偉総裁との親密さを街頭アピール
菅義偉新総理総裁の側近議員が、疑惑を追及するジャーナリストの取材を「脅迫」「嫌がらせ」と呼び、刑事告訴を仄めかしている。昨年6月にも、取材の申し入れのために地元事務所を訪れた取材者を虚偽の建造物侵入で刑事告訴した”前科”のあるこの代議士。最高権力者となった菅氏の威を借りて、早速、圧力をかけてきた格好だ。
その代議士とは、公選法違反疑惑で昨年10月に経産相を辞任した菅原一秀衆院議員だ。説明責任を果たさないまま、元公設秘書に責任を擦り付けて不起訴(起訴猶予)となっている。
この菅原議員が自民党新総裁となった菅義偉氏の側近として復権を目論み、駅頭活動を再開していることは前稿で触れた。総裁選翌日の9月15日、いくつかの駅をチェックした後、7時半過ぎに西武池袋線大泉学園駅改札脇のデッキで駅頭を行う菅原議員を発見。
大泉学園駅周辺には菅原議員の有力後援者が数多く在住している。菅原は自民党総裁選を制した菅義偉新総裁との親密な関係をアピールするチラシを配布、演説内容も菅新総裁との関係が中心だ。
早速、菅原議員を直撃したものの完全無視。徹底ガードを命じられた秘書2人が取材妨害に勤しむ。
〈参照:菅氏の人気に便乗、1年ぶりに有権者の前に姿を見せアピールに勤しむ菅原一秀前経産相〉
◆取材妨害に勤しむ政策秘書、大甘な有権者、冷静な小学生
「ストーカー行為はやめてください!ストーカーされています!」野太い声を発するのは私設秘書の武藤氏。生憎だが菅原議員に対しての恋愛感情はない。
多くの有権者が説明責任を果たすことを求めており、そのような声に対してどう思うかと菅原議員へ質問を投げたが、何ら反応を見せない。有権者買収の顧客リスト廃棄についても訊いてみたがやはり視線すら合わせない始末。
「政治活動の妨害はやめてください」執拗に割って入る政策秘書の石黒氏。
距離を詰めてくる秘書たちにソーシャルディスタンスを取るように求め、取材妨害を行わないよう注意を続けた。
「菅原さん頑張ってな!」有権者から声が飛ぶ。「応援してます!」握手を求め激励する人までいた。
その他、菅原に駆け寄りグータッチを交わす支援者も3人ほど確認できた。何か言いたげに近寄ってきた男性に菅原議員の有権者買収について訊いたところ「デマです!」と叫んで走り去った。大泉学園駅周辺では、いまだにかなり支持されているようだ。
騒ぎを観ていた小学生たちにどう思うか訊いた。
「あ、カニメロン、知ってる」
「悪いことをしたのに、こうやってまた出てくるというのは……」
大人より余程しっかりしている。もちろん中には菅原議員に冷たい視線を向ける大人もいたことを付け加えておく。
◆「記者会見やりました」の一言で、質問は完全無視
菅新総裁との関係をアピールする菅原議員に以下の質問を投げかけたが、全てスルーされた。
――香典、蟹、メロン、後援会バス旅行といった有権者買収・公選法違反について有権者に説明する義務がある。説明責任は果たしたのか?
――菅氏の話ばかりだが、ご自身の公職選挙法違反・有権者買収について説明はしないのか?
――説明責任を求める有権者の声を無視するのか?
――昨年10月、有権者買収の顧客リストファイルを削除するよう秘書に指示したか
駅頭終了後、立ち去る菅原議員を再度直撃取材した。
――説明責任を果たされましたか?有権者が説明責任を求めていますが、有権者に説明しないんですか?
振り返り、苛立ちを隠さずこう答えた代議士。
「記者会見やりました」
――あれで説明責任を果たしたと思われますか?
「思ってます」
――有権者のほとんどはそう思ってないですよ
「……………」
◆取材を「脅迫」と呼ぶ代議士
さらに菅原議員は筆者の取材について非難してきた。
「完全に政治活動違反」「政治活動妨害」
国会議員である以上は取材に答える義務があると告げる。
「取材じゃないでしょそれは」「強制取材は取材と言いませんから」「あなたのは取材じゃない、申込みもないし」
申し込みしない取材手法があることも判っていないようだ。取材ではないと言うなら何だというのか。問うと代議士は驚きの発言。
「あなたのは脅迫ですよ、それは」「脅迫ですよ」
筆者が何を”脅迫”したのか尋ねたが、明確な返答はなかった。
昨年6月19日、菅原議員の練馬事務所へ取材申し込みに訪れたジャーナリスト(筆者と藤倉善郎氏)を虚偽の建造物侵入で刑事告訴したのは、菅原議員の指示か尋ねた。すると・・・、
「取材の名の下の嫌がらせじゃないですか、あなたのは」
――いえ、取材ですよ。ああ、じゃああれは刑事告訴という名の嫌がらせですか?
「いや、あれはあなたがうちの事務所に入ってきたからですよ」
――取材の申し込みに入っただけですよ
「いや、あれは完全な違法行為」
――違法行為じゃないです
〈参照:公職選挙法違反疑惑を指摘のジャーナリストを国会議員事務所が警察に虚偽通報か〉
この時の刑事告訴に際しては、自民党の顧問弁護士が菅原議員の事務所に呼ばれ、協議が行われていたことが判っている。今回また自民党総裁の側近議員が「脅迫だ」と騒ぎ立てたことで、取材者を封じ込める策動に党として再び関わる可能性もある。
ひとしきり騒ぎ立てた代議士は秘書が運転する車に乗り込み走り去った。
◆「完全に消して」「ファイルそのものを」“顧客リスト”を削除
菅原議員は経産相だった昨年10月、疑惑の焦点だった有権者買収の顧客リストについて「事務所を探したが、全く見当たらない。データもない」「ひとつずつ調査をしているところ。今後とも調査を進めていきたい」などと各メディアに答えていた。しかし実際には、この時、菅原大臣は顧客リストファイルそのものを完全に消すよう秘書に証拠隠滅を命じていた。
菅新総理総裁の下で復権を目論む菅原議員。この「菅(スガ」の威を借るカニメロン」をにどのような投票判断を下すのか、次期衆院選で東京都第9区の有権者の民度が問われることになる。
<取材・文・撮影/鈴木エイト(ジャーナリスト)>
【鈴木エイト】
すずきえいと●やや日刊カルト新聞主筆・Twitter ID:@cult_and_fraud。滋賀県生まれ。日本大学卒業 2009年創刊のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表~主筆を歴任。2011年よりジャーナリスト活動を始め「週刊朝日」「AERA」「東洋経済」「ダイヤモンド」に寄稿。宗教と政治というテーマのほかに宗教2世問題や反ワクチン問題を取材しトークイベントの主催も行う。共著に『徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書)