農作物の盗難被害が相次いでいる。茨城県警が8月末までに認知した今年の被害は計56件で、昨年同期の40件を上回る。9月と10月は農作物の収穫が本格化し、被害が増加する恐れもある。県警や農家らは警戒を強めている。
今年8月末までの被害のうち、半数を超える31件は県西で確認された。鹿行と県央がそれぞれ9件、県南は6件だった。県北は1件だった。
結城署によると、結城市内の農家からは約10件の被害届が出されている。市内のブドウ農園だけでも、少なくとも3件確認されている。下妻市や桜川市では8月のお盆の時期に、梨やリンゴ、ブドウが盗まれる被害があった。
農作物の盗難被害は例年、9月と10月に増える。県警によると、昨年1年間に県内で認知した被害件数は計75件。そのうち約3割の26件が9、10月に集中していた。ブドウや梨といった果物に加え、県内で生産が盛んな栗の被害も多い。
今後は、新米の盗難も懸念される。神栖市では9月19日夜から20日朝にかけて、農業男性(70)の倉庫から、出荷前の玄米計123袋(約80万円相当)が盗まれた。
「本当に許せない」。結城市でブドウ園を営む会沢将史さん(42)は語気を強める。8月25日午前6時頃、収穫のためにハウスに入り、たわわに実っていたブドウがなくなっていることに気づいた。会沢さんによると、被害に遭ったのは約100房。25万円相当だという。
実の大きさや糖度など品質にこだわり、直売のみで消費者に届けてきた。「1年間、丹精込めて作ってきた。楽しみにしてくれている人のもとに届けられず、悔しい気持ちでいっぱい」と唇をかむ。
収穫シーズンは、7月から10月初旬頃までの3か月ほど。この期間の売り上げが1年間の暮らしを支え、パート従業員の給料も賄う。苗の手入れや花の摘み取りなど作業は年中続き、春先はハウス内の温度を保つため燃料費がかかる。「生活に及ぼすダメージは大きい」という。
ハウスは道を挟んで自宅の向かいにある。入り口にはダイヤル式のチェーンをかけ、ビニールを破られても侵入されないよう、内側から格子も設置していた。しかし、今回の被害では、ビニールが破られた形跡はなかった。「どこから入ったのか。犯人は入念に下見をしていたのかもしれない」と頭を抱える。
被害を受け、防犯カメラを設置した。「『おいしい』と言ってくれるお客さんの笑顔があるから、1年間の作業も報われる。こんなにあっけなく盗まれてしまってはやるせない」。枝だけになったブドウの木を見て、肩を落とした。