過労で脳出血 元小学校教諭の公務災害認定 逆転勝訴 福岡高裁

脳出血で寝たきりになったのは長時間労働が原因だとして、熊本県天草市の元小学校教諭の男性(53)が公務災害と認めなかった決定の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁は25日、請求を棄却した1審・熊本地裁判決(2020年1月)を取り消し、公務災害に当たるとする逆転勝訴の判決を言い渡した。増田稔裁判長は恒常的な長時間残業に加え、複数の業務を同時に抱えるなどしていた男性の負担を複合的に勘案した。部活動など教員の重い負担が指摘される学校現場に警鐘を鳴らす判決と言えそうだ。
男性は11年12月に勤務校から帰宅後に意識不明となり、搬送先の病院で脳出血と診断された。四肢まひや発語不能などの障害が残り、身体障害者手帳の「1級」に認定された男性は、12年3月に地方公務員災害補償基金(東京都)の熊本県支部に公務災害認定を請求したが認められず、その後2回の審査請求も棄却された。
1審判決は、脳出血の発症前1カ月の時間外労働は校内で約50時間、自宅に持ち帰ってから約40時間の計約90時間だったと判断。「発症前1カ月の時間外労働がおおむね100時間」という公務災害の認定基準には届いていないなどとして、男性の訴えを退けた。
一方、高裁判決は、男性が週末を含む部活動の指導に加え、研究主任として校内研修の企画や、研究発表会に向けての資料作成なども担当していたと指摘。校内での時間外労働では終わらなかったプリント作成などの業務は自宅に持ち帰って夜遅くまで続けざるを得ず、睡眠時間を削るしかない状況にあったとした。
その上で、高裁は男性が「恒常的に長時間の時間外労働をしていた」と判断。発症前1カ月の時間外労働については、1審同様に100時間には届かなかったものの、増田裁判長は「(担当する)業務を同時期に並行して処理しており、負荷については業務全体として評価する必要がある」と結論付けた。
地方公務員災害補償基金は「判決文を入手していないので、コメントは控えます」と述べた。【宗岡敬介】
弁護団「教師の勤務実態をしっかりと見つめた判決」
元小学校教諭の男性の弁護団は福岡高裁の逆転勝訴判決後、熊本市内で記者会見した。中島潤史弁護士は「小学校の教員が置かれている過酷な状況を裁判所が正面から認めてくれた判決だ」と歓迎。教員の長時間労働が社会問題化する中、田尻和子弁護士も「現役で働いている教員にとっても力強い判決になった」と喜んだ。
弁護団には、教員の過労死訴訟を数多く手がけてきた松丸正弁護士も加わっていた。松丸弁護士は電話取材に、今回の判決は「発症に近づくにつれて時間外労働が増えていった点など、勤務実態を丁寧に見てくれている」と指摘。「業務の実質的な過重さから、公務災害と認定するのは当然の判断だ。業務の自宅への持ち帰りや、部活動の負担なども含めて教師の勤務実態をしっかりと見つめた判決で評価できる。この先生一人の問題ではない」と話した。【栗栖由喜、宗岡敬介】