部活顧問「定額働かせ放題」 長崎の私立高事務職員、未払いの時間外賃金など求め学校提訴

長崎県内の私立高校で陸上競技部顧問を務める50代の女性事務職員が、部活動強化のため自宅に選手を下宿させることを余儀なくされ長時間労働を強いられたとして、学校法人に未払いの時間外賃金など約1580万円の支払いを求め長崎地裁に提訴した。部活の現職の指導者が過重労働を理由に勤務先を訴えるのは異例。女性は「指導者の自己犠牲を前提とした部活強化はおかしい」と訴える。
提訴は10日付。訴状などによると、学生時代に有力な陸上選手だった女性は、1995年から非正規の講師として同校で勤務し、陸上競技部を指導。2000年にいったん雇い止めになったが、同校監督から「(部活を)再建したい」と誘われ、15年に同校事務職員となり、女子を指導するようになった。
同校では部活強化のため、各部の顧問に特待生の獲得枠が割り振られ、女性は3~4人の獲得を求められた。しかし、女子の陸上競技部は長く休部状態だったため近隣から有力選手を集めるのは難しく、離島など遠方から勧誘せざるを得なかった。寮はなかったので勧誘した生徒を自宅に下宿させることにし学校側も了承。多い時で3人が下宿した。
好成績を残すには選手の体重管理が重要なため、女性は毎朝午前5時ごろから朝食や昼の弁当を作る。日中は事務職員として就職指導の仕事をした後、放課後は午後6、7時ごろまで練習を指導し、その後も選手の通院送迎や夕食作りをする。土日祝日も練習や大会があり、「時間外労働は毎月100時間を超す」と言うが、支給される「超過手当」は毎月約1万4000円にとどまる。
女性は下宿代として保護者から月5万7000円を受け取っているが、3食の食費や光熱費、合宿費やしんきゅう院への通院代など生活の大半をまかなっており「すべて必要経費で消える」と話す。一方、長崎県内のある有力校は、学校側が寮を用意し、見守りで泊まる教職員も多人数で回すなど、負担が1人に偏らないようにしている。別の複数の有力校では寮に管理人がおり、食事は業者に外注しているという。
女性も学校側に寮設置などを再三求めたが「ある程度、自己犠牲の下でやらないと」などと言われたと主張。「過重労働を強いる学校の姿勢を問いたい」として、請求権が残る2年分の時間外賃金905万円と労働基準法違反の付加金(制裁金)674万円を求め、提訴することにした。
女性宅に下宿しながら県大会で上位に入った選手もおり、女性は「選手が最高のパフォーマンスを出せるようプロ意識を持って指導してきた。『定額働かせ放題』はおかしい」と訴える。学校法人は取材に「お互いに意見の食い違いがあり、主張すべき点は主張しながら、教職員が働きやすい職場づくりをしていきたい」と答えた。【樋口岳大、中山敦貴】