16歳の孫娘をメッタ刺し……祖父86歳の“激情”と“三角関係”

「大変なことを起こしてしまった……。ケンカしていたら、動かなくなった」
9月9日深夜。冨澤進容疑者(86)は、息子に電話をかけ、呆然とした口調でそう告げた。傍らには、Tシャツを血まみれにして横たわる高校2年生・友美さん(16)の姿。進が溺愛して止まなかった孫娘だった。
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「カッとなってやった」は辻褄が合わない?
現場は福井県福井市の北西部、九頭竜川左岸の田園地帯にある2階建ての一軒家。友美さんは今年7月から親元を離れ、この家で祖父と二人暮らしをしていた。
冒頭の電話後、友美さんの父親が駆けつけて110番通報したのは、日付が変わった10日の午前零時過ぎのこと。捜査関係者が語る。
「被害者は包丁で上半身をめった刺しにされ、台所付近で倒れていた。1階寝室を中心に数カ所に血痕。防御創がないため、寝室にいて無防備な状態をまず襲われたとみられる。死因は出血性ショックだった」
血を流して逃げ惑う孫娘に、追いすがる祖父がなおも包丁を突き立てる凄惨な光景が浮かび上がってくる。
“ケンカ”から時間が経っても感情が収まらず……
「容疑者は『カッとなってやった』と供述しています。ただ、状況を鑑みると“ケンカ”から時間が経っても感情が収まらず、犯行に及んだと考えた方が辻褄は合います」(社会部記者)
台所に日本酒の紙パックが置かれており、逮捕時の進はアルコールが入っている状態だったが、
「酩酊していたとは言えず、明らかな認知症の症状もない」(前出・捜査関係者)
いつもニコニコして温厚だったという老人を、かくもおぞましい激情に駆り立てたのは何だったのか。
3世代の複雑な家族模様
「その晩、孫と家庭の事情のことで言い争いになったと。被害者の言い方や態度をきつく感じて腹が立ったようだが、背景を慎重に捜査している」(同前)
そこには祖父、両親、孫――3世代の“三角関係”が織り成す、複雑な家族模様も透けて見えてくる。
「進さんは自宅に作業場を持ち、鯖江市の眼鏡会社の下請けをしている職人でした。息子さんも進さん夫婦と同居して家業の手伝いをしていました。独身のまま40歳を過ぎ、気を揉んだ進さんが世話をして、お見合いで中国の女性と結婚したんです」(進の知人)
結婚翌年の2003年秋に誕生したのが、友美さんだった。
「進さんは、もう大変な可愛がりようで、友美ちゃんの手を引いて散歩したり公園で遊んだり。幼稚園に上がってからは、雪の日も進さんが車で送り迎えしていました」(近隣住民)
友美さんの3つ下に妹も生まれ、3世代6人で暮らしていた。ところが――。
「息子さんの奥さんが土地と合わず、息子さん家族4人が市の中心部に移り住んだんです。約10年前、友美ちゃんが小学校に上がるくらいのことでした」(同前)
祖父のもとに“避難”してきたのに……
今春、進の妻が認知症と脳梗塞を患って入院。独り身の祖父のもとに“避難”してきたのが愛孫だった。
「両親がケンカばっかりしていて、それを見ているのが嫌になったの」
友美さんは祖父と同居を始めた理由を、周囲にそう打ち明けている。
教員になる夢を持っていた友美さん。引っ越しと同時にバイト先のドラッグストアを辞め、祖父宅から自転車で1時間かけて私立高校の進学コースに通っていた。
祖父を頼った友美さんが、あまりにも浮かばれない。
※その後、福井地検は、冨澤進容疑者の刑事責任能力の有無を調べるため、約2ヶ月の鑑定留置を決めた。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年9月24日号)