大阪市を廃止・分割する「大阪都構想」の事務作業を担う大阪府・市の共同部署「副首都推進局」の課長が、局製作の都構想の広報動画について、「(市民を)賛成に誘導するため」と会議で発言していたことが29日、市への取材や議事録で判明した。同日、都構想に反対する自民党市議団から抗議を受けた松井一郎市長は「誤解を与えるような発言で不適切だった」と釈明した。
動画は約20分間で、11月1日の住民投票に向け、市民に制度を説明するためのもの。推進局は8月18日、市の広報に助言する特別参与の山本良二・近畿大教授らにアドバイスを求める会議を開いた。その場で山本氏は「(特別区に)変わればバラ色になるという印象を与えてしまわないか。かなり偏った内容であると感じた」と懸念を示した。これに対し、推進局の広報・調整担当課長は「賛成に誘導するために、あくまでも市役所としての市政広報でありますので、市長の方針もありますし、それを踏まえた議論の集大成として、短い動画に表した」と説明していた。
自民市議団は29日、市の広報が公平性や中立性を欠くとして松井市長に抗議文を提出し、職員の発言が「政治行為を制限する地方公務員法に抵触する可能性が非常に高い」と指摘した。北野妙子幹事長は「1人の職員の問題にされかねないが、職場にそういう(賛成を誘導するような)土壌があったのではないかと危惧している」と訴え、市長に説明を求めた。
応対した松井市長は課長を厳重注意したと明かした。ただ、「昨年の選挙で都構想を進めるという公約を掲げ、市民から負託を受けた。公約を実現するのが役所のミッションだ」と述べ、広報の姿勢自体に問題はないという従来の見解を崩さなかった。
推進局の広報を巡っては、制度案を説明する全戸配布のパンフレットや広報紙でも、特別参与から「広報というより広告だ」などと修正を求める指摘を受けていた。市議会で批判された同局の手向健二局長は「市長の掲げる都構想実現を目指すのが役割」と主張し、行政の中立性・公平性が危ぶまれる事態になっている。【野田樹】