【「ポスト安倍」時代の政治とメディア】コロナ禍が露呈させた「煽り・反権力」に走る“ひと昔前のまま”のテレビ… 菅氏、小池氏など政治家のメディア操縦術は高度化

菅義偉首相と、東京都の小池百合子知事が23日、新内閣発足後、初めて顔を合わせた。24日発行の夕刊フジでも紹介していたように、2人は「水と油」の関係だが、メディアに対する操縦術も対照的だ。
小池氏の話題づくり、絵づくりのうまさはここで言うまでもないが、新型コロナ禍においてもいかんなく発揮した。ロックダウン発言で衝撃を与え、フリップを駆使して「感染拡大警報」「特別な夏」などとキャッチコピーを広める様は、もはや芸の域だった。
そうした小池氏のメディアハッキングの手法を「柔」とするなら、菅首相の手法は総務行政に明るいだけあって、制度から揺さぶる「剛」だ。
総務相時代には、NHKに受信料値下げを迫った。先ごろの自民党総裁選では、携帯電話の値下げを掲げたなかで電波利用料見直しに言及した。携帯各社を戦況恐々とさせただけではなく、テレビ局側にも「次は自分たちではないか」と身構えさせたに違いない。
番組づくりや表現を規制することには極力慎重であるべきだが、仮に菅政権が電波制度改革を本格化させるなら、テレビ離れをした保守層は喝采を送るだろう。というのも、コロナ禍で過度に恐怖を煽った一部のワイドショーに対し、ネット世論の風当たりは非常に強いからだ。
特に、テレビ朝日系の「モーニングショー」は、春先に緊急事態宣言が出たころ、出演者が欧米のような感染爆発が起こると強調した。現実がそうならないと、データにケチをつけ、「国民全員へのPCR検査」と受け取れる、およそ現実離れした言説をふりまいた。
そうしたワイドショーの報道姿勢は、都知事選での再選を狙い、「危機に強いリーダー」を演出する小池氏との“利害”が一致したと感じる。フリップ芸で、コロナへの警戒を煽る小池氏との相性は抜群だった。
そして、自民党総裁選に突入すると、多くの番組はコロナのことなど忘れたかのように大々的に報道した。ワイドショー嫌いのネット民からは「総裁選が“上書き”してくれてよかった」と皮肉られる始末だ。
コロナ禍は、既存のテレビ業界がいまだに「煽り」や「反権力」に過度に走る問題をさらけ出した。ユーチューブや外資系動画配信サービスが普及し、政治側のメディア操縦術が高度化するなかでも、テレビ側が、ひとむかし前のままなのが心配だ。
他方、変化の兆しはある。同じテレビ朝日系ワイドショーでも、ネットのアベマTVの「アベマプライム」は、筆者も何度か出たが、左右を問わず面白い論客を呼んで奔放にやっている。フジテレビ系の「日曜報道 THE PRIME」も玄人好みの政策論議が小気味いい。テレビから離れた人たちを連れ戻すには、現実を直視し、問題解決策を本気で模索する姿勢が重要ではないか。(言論サイト「アゴラ」編集長・新田哲史)