「他人に漏らしませんから、安心して書いて下さい」…第1回国勢調査の書類発見

国勢調査が始まって今年で100年。宮城県石巻市の国勢調査指導員の男性が、1920年(大正9年)の第1回調査時に使われた書類一式を見つけた。国が初めての調査にかける意気込みや、当時の世相が伝わる内容で、総務省は「100年前から続く統計の重要性を伝える貴重な資料」としている。
総務省統計局の資料によると、第1回国勢調査は20年10月1日、「平民宰相」原敬首相のもとで行われた。人口などを調べる全数調査は日本初の試みで、政府は川柳や替え歌などを交えて宣伝し、国中が「一等国の仲間入りだ」とお祭り騒ぎになったという。
初回調査時の書類一式を見つけたのは、国勢調査指導員を務める石巻市北村の元高校校長、佐々木慶一郎さん(73)。30年ほど前、古物商から1箱1000円で購入した段ボールの中に入っていたが、当時は興味を持てずに放置していた。その後、国勢調査指導員となり、改めて内容を確認したという。
書類は調査員だった京都府の男性のものとみられる。調査員の委嘱状や、今でいう調査票にあたる氏名、生年月日、職業などを書き込んでもらう「国勢調査申告書」などが含まれていた。
京都府が発行した国勢調査の趣旨を説明する文書には、「世界の文明国は皆同様に国勢調査を行います」「外国に劣らぬ立派な成績を挙げる様にしたいものであります」と、調査が国の威信をかけたものだと示す記述がある。「決して他人に漏らしませんから、安心して書いて下さい」「


( も ) し不実の申告をしたりなどすると制裁があります」と、“アメとムチ”を駆使して国民に調査に協力させようとする姿勢もうかがえる。
国勢調査申告書には、「

国民
( ひとびと ) の

生活
( くらしかた ) 、

社会
( よのなか ) の

実況
( ありさま ) をよく知り」など、話し言葉に近いフリガナをふることで、多くの人が読めるようにする工夫が見てとれる。「誕生の月日の

明な
( よくわか ) らぬ者は(中略)不明と書き入れ」とあり、自分の生年月日を知らない人が一定数いたことも伝わってくる。
佐々木さんは「農家には自作、小作のどちらかを書き込むよう求めるなど、当時の世相がわかる記述が数多くある」と語り、「当時は日露戦争、第1次世界大戦の後。富国強兵のための調査という意味合いがあったのだろう」と感慨深げに話していた。
書類一式は、佐々木さんが自宅に設けた私設資料館で展示している。問い合わせは0225・73・4057へ。