【ラジオ大阪 ぶっちゃけ正論】日本人拉致事件 解決へ国民の声を 荒木和博氏×小島新一・大阪正論室長

政府に解決能力なかった
小島 北朝鮮による日本人拉致事件で、悲しい出来事が相次いでいます。2月、拉致被害者の有本恵子さんの母、嘉代子さんが94歳でお亡くなりになった。6月には、横田めぐみさんの父、滋さんが87歳でお亡くなりになりました。
荒木 結果的に何もできないままで、申し訳ないという言葉しかありません。
拉致が解決してこなかった要因の一つは、東西冷戦下で日本は安全保障をアメリカに依存していて、その隙間に入ってしまったのが拉致問題だった、といえるでしょう。アメリカにとっての安全保障上の問題は日本にとっても問題だったけれども、日本独自の安全保障問題は存在してはならなかった。拉致問題はまさに後者。解決する意思も能力も政府になかった。
世論の高まりしかない
小島 世界には「公正と信義」を信頼できる国しかないという非現実的世界観に立脚する憲法があるからこそ許された姿勢ですね。
有本さん、横田さんがお亡くなりになって、なにかをしたいと考えている国民も多いと思います。
荒木 まずは周囲の方に、拉致について話をしていただきたい。2002年に被害者5人が帰国して18年がたち、拉致を知らない若い人も増えています。
北による拉致を日本政府が国会で明らかにしたのが1988年、めぐみさんの事件が公になったのは1997年ですが、めぐみさんが拉致された1977年11月の時点で、政府は北による拉致だとわかっていました。なのに隠してきた。当時の現地警察署長が後に横田夫妻に「最初から分かっていました」とおわびされています。
拉致直前に日本赤軍によるダッカ日航機ハイジャック事件があり、犯人側の要求に屈した日本政府の対応が批判されていました。加えて中学1年の女子生徒が海外の工作機関に拉致されたとなると政権がもたない。取り戻す手段も分からない。だったらなかったことにしよう-という判断ではなかったかと思います。
20年後、国会で取り上げられ、産経新聞とAERAが報じて大騒ぎになり、ようやく政府が動いた。
小島 政府を動かすにはやはり、国民の声、世論の力、高まりしかない。
荒木 拉致の現状は、戦後の経済繁栄の中で、「国を守ることなんか考えなくても、なんとかなるさ」とのんきにやってきたツケでもあります。国家も国民も守るのは自分たちでしかないという当たり前のことも改めて認識すべきです。

「ぶっちゃけ正論」は、時事問題について各界の専門家から話を聞くコーナー。「ラジオ 関西経営者列伝」と交互に2週間ずつ放送しています。次回は10月16日、福井県立大学教授の島田洋一さん(前編)。

あらき・かずひろ 1956(昭和31)年生まれ。慶応大学法学部卒業。民社党本部書記局、現代コリア研究所研究部長、「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)」事務局長などを歴任。現在、拓殖大学海外事情研究所教授。特定失踪者問題調査会代表。著書に『山本美保さん失踪事件の謎を追う 拉致問題の闇』(草思社)など多数。